上江木稚蚕共同飼育所は、丘の上の巨大な倉庫のような建物である。
現在は人形店の倉庫になっているが、最初から倉庫だったと言われても不思議ではないような雰囲気だ。
「昭和44年度農業構造改善事業」の文字が見える。
大部屋のセントラルヒーティング方式に助成金が付くようになったのが昭和40年のことなので、おそらくこの施設も大部屋飼育であろうし、4年の間の進歩も取り入れられた最新鋭の飼育所だったのだろう。
建物の左側には更衣室がある。東上野稚蚕共同飼育所もそうだったが、更衣室は最初から作り込まれている。
初期の稚蚕共同飼育では飼育室の気象管理に主眼がおかれたが、後に防疫の研究が進み、衛生管理が重要視されるようになると、作業時に着衣を着替えることが要請されるようになったのであろう。
電床育の飼育所では、更衣室は後付けで増築されたものだったが、このような大部屋飼育の時代には更衣室は最初から設計に組み込まれるようになったのである。
中央に見えるのが更衣室。部屋の両側に扉があって、男女別々の入口になっているという合理的な造りだ。
着替えを終えると、そのまま飼育室内に入ることができる。
貯桑室への入口は道路から直接車が横付けできるようになっている。畑としても好立地と思われる丘の頂上に飼育所があるのは、貯桑室への桑の搬入を簡単にするためだったのだろう。
中を見たわけではないので断言はできないが、貯桑場の地下室からはリフトなどの動力で桑を飼育室に上げていた可能性もあるだろう。
消毒槽が残っていた。
近くで見かけた2階建ての養蚕農家。
屋敷林は衰え気味だ。
(2007年02月13日訪問)