高崎市街から西を見ると、山頂に巨大な観音像をいただく丘陵が広がっている。この丘陵は独立丘陵ではなく、長野県との県境の急峻な山塊から端を発する舌状丘陵で、高崎市街のすぐそばまで伸びている。 丘陵の西半分は台地で広々とした畑作地帯、東半分は小さな谷戸が多くカシやナラなどの里山の森が残る。
丘陵の西と東を分けているのが、県道前橋安中富岡線(県道10号線)だ。県道から東側は一般に「観音山丘陵」と呼ばれる。安中線から西側の呼び名があるのかどうかわからないが、旧村名から「東横野台地」とでも呼べばいいだろうか。
碓氷地方の稚蚕飼育所めぐりの出発点は、東横野台地である。ここから西に向けて進んで行くことになる。
とは言え、初日の訪問地のいくつかは、県道10号線より東側に位置している。厳密に県道の西側だけを見て行くのではなく、県道に沿った飼育所は一緒に見て行くのが効率的だからだ。
最初に訪れた中岩井稚蚕共同飼育所も、県道の東の崖線の上にある。
赤城南面で多く見たタイプの飼育所だ。壁面には飼育所の名前が残っている。
ブロック電床育の目安である高窓がなく、高窓に相当する部分は換気扇になっていて採光の役目はない。
換気扇の数は片側4つ。
配蚕口は東側。
現在は工務店の倉庫になっている。たまたま工務店の人が来て中をのぞかせてくれた。中はだいぶ改造されているがブロック室の構造は確認できた。
壁面の換気扇は大部屋方式の飼育所に見られる設備だが、下部に換気扇がない場合はブロック電床育の可能性も考慮しなければならないことがわかった。
南西の角には、屋根の低い部屋が建て増しされたようになっている。おそらく更衣室ではないかと思う。
坂の途中にあり、道路から直接地下の貯桑室に入れるようになっている。
上に見えるのはトイレであろう。やはり建て増ししたように飛び出して付いているが、室内から利用できたようだ。
換気扇といい、トイレの入口が室内側にある点といい、設計が新しい。ブロック電床育の飼育所としては、末期のものと考えていいと思う。
消毒槽が残っていた。
(2008年05月02日訪問)