小桑原という、いかにも養蚕に関係のありそうな地名にある飼育所。
周囲は緩やかな丘陵で、飼育所のある一角は雑木林になっている。
越屋根の付いた飼育所独特の建物は遠くからもすぐにわかった。
現在は、工務店かなにかの倉庫として使われているようだ。
壁は真壁の土壁。妻の部分の窓の様子などからして、建物は古そうだ。
戸が開いていたので外からのぞかせてもらった。手前に5室のブロック電床育があり、奥のガラス戸の先には土室電床育の室が見えた。土室電床育はたぶん6室。
つまり手前の飼育室と、奥の飼育室で、方式が異なっている。奥の方が古い設備で、あとから手前の建物を建て増したのかもしれない。
そしてなにより特徴的なのは、小屋(屋根の架構)が「和小屋」だということ。木造トラスとの違いは、宮沢飼育所の小屋組みと見比べたらわかりやすいだろう。
これまでに和小屋の飼育所は、祖母島北部稚蚕共同飼育所の例があったが、あちらは例外的なサイズの飼育所だった。
この小桑原の飼育所は、一般的な飼育所のサイズでありながら和小屋を用いているという点で新発見だ。和小屋の飼育所もあるだろうとは予想していたが、これで確認できたわけだ。
建物は外から見ても、なんとなく継ぎ足したような感じになっている。ブロック電床育部分はモルタル塗り、土室育部分は漆喰塗りになっていることから、年代の違いも感じられる。
西側はおそらく宿直室になっていると思われ、地下の貯桑室への入口は斜面から直接入れるようになっていた。
トイレは室内にあるようで、土室育時代の飼育所としては珍しい。
古い飼育所だが、規模も大きく使いやすそうで、きっと地域で活躍した建物だったのだろうと思う。
飼育所の周囲の山の様子。かつて、落葉や薪などを採るためのヤマだったろう。
(2008年05月02日訪問)