2007年ごろから群馬県の稚蚕共同飼育所めぐりを始めて、2009年ごろまでで西毛地方をひとまわりしたのだが、ここまで、普通の人々が群馬県の蚕糸関係の歴史を訪ねるときに必ず見るであろうスポットにまったく立ち寄っていなかった。
だがこの2年間で少しは蚕糸業の知識もついたので、定番スポットでも文化財案内板以上のものが見えるかと思い、おくればせながら2010年から定番スポットめぐりを始めたのだった。
先に紹介した荒船風穴やここで紹介する旧碓氷社事務所は、まさに定番スポットである。
碓氷社は安中方面で誕生した座繰り製糸の組合で、それまで個人個人で作られていた座繰り糸を規格化して輸出に耐える品質に高めることに成功した。群馬県を代表する製糸組合である。
国道18号線沿いのホームセンターがある敷地の一角に、その事務所の建物が残っている。明治38年の建物でいわゆる近代和風の流れのの建築だ。だが見ての通り近代和風としてはかなり地味。その点では前橋市にある臨江閣別館(明治43)ときわめて似た印象の建築だ。
記憶では、この建物は以前もっと北側に建っていたように思う。ホームセンターが出来たときに引き屋をしたのではないだろうか。
ときどき見学会などはあるようだが、通常は内部は見学できない。外から覗くことはできたが、正直、中を見学しても建物から得られる情報は少なそうだ。
天井が高いのがわかる。これとて生糸の品質管理と関係があるわけではないだろう。大味な近代和風とは、こういうものなのではないか。
文化財の案内板にあった間取り図。
(2010年01月10日訪問)