富岡方面の稚蚕飼育所巡りから半年後、友人と秋畑地方を再訪した。このころには稚蚕飼育所巡りも一段落し、私の興味は壮蚕の飼育農家や、山村の暮らしに移っていた。
私は四国徳島に住んでいるが、群馬県の鏑川の南岸の山村は徳島の吉野川の南岸の山村とよく似ていて、まるで四国にいるような錯覚に陥ることがある。きっと秋畑で生まれ育った人が徳島に来たら、同じように感じることだろう。
秋畑地区は三波川帯という結晶片岩の地質であり、その地質は四国まで続いているのである。おそらく共通する地質が同じような生活様式を作り出しているのではないかと思う。
最初に訪れた荻ノ久保という集落に入る手前に、辻堂があったので車を停めた。
堂の前には2つの板碑がある。板碑は中世に流行した供養塔で、このように結晶片岩の剥離しやすい性質を利用して板状の碑を建てたものだ。関東平野の西側につづく関東山地に特に多く、関西では徳島や大分に多い。
辻堂は、茶堂に近い構造のものだった。茶堂は山陽地方や四国に多く分布する辻堂の一種で、このように扉を付けずに内部を吹き放ちにして自由に出入りできるようにした構造の堂である。
群馬県や関東山地ではほとんど見かけないように思う。
内部は板敷き。
奥には石仏が置かれていた。
壁に貼られていた注意書き。
「家畜立入禁」とある。
犬や猫のことをいっているのだろうか、まさか牛馬をこの堂の中に連れ込む人はいないと思うのだが…。
(2009年04月30日訪問)