せっかく古墳群の中をウロウロしたのだから、古墳にも立ち寄ることにした。このあたりは、高校時代に自転車で遠乗りしてよく見にきた場所だが、さすがに記憶が薄れてきているので、ここらで一度見直しておきたいところだ。
最初に訪れたのは、古墳群の北側にある伊勢塚古墳。
八角墳という珍し外形をしており、石室も立派で、群馬県を代表する古墳のひとつと言っていいのではないか。
横穴式石室が南側に開口しており、柵や扉などもなく、自由に見学できるのがうれしい。
羨道部分に土が流れ込んで入口が低くなってしまっている古墳がたまにあるが、ここはそういうこともなく、普通に歩いて入室できる。
羨道から玄室を見たところ。羨道よりも玄室の横幅が広く、左右対称になっている石室の構造で、このタイプを「両袖型石室」という。
奥壁は砂岩の切り石を積み上げているが、注目すべきは側壁。玉石を細かく積み上げた作りになっていて、案内板によれば「模様積み」というのだそうだ。
よく見ると、側壁はカーブを描いていて、天井に向けて狭くなっている。
大きな玉石を所々に配置し、間は平たい小石を満たすデザインになっている。
この古墳が造られたのは六世紀後半と考えられている。千数百年のあいだ、これが崩れることなく残ったというのは驚くべきことだ。
玄室から玄門を見る。
緑泥片岩の柱状の石が左右にあり、その上にまぐさ石を載せたようなデザイン。実はまぐさ石は柱の上に荷重をかけておらず、これは単なるデザインなのである。
片岩の柱が長年の石の重みに耐えないだろうと、この古墳の設計者は考えて、荷重を逃がしたのだ。
(2008年12月30日訪問)