ズェガビン山参拝のつづき。
山道は人ひとりが歩ける程度の幅。斜度のあるところはほとんどが階段になっている。そういう点では、普通の山登りとくらべて体への負担は少ない。
参拝客は1/4くらいが外国人、残りは現地の若者が多かった。年配の人はあまり見かけない。
全行程の前半は森の中を登ってゆくが、途中から尾根道に出て後半はずっと日当たりのよい道が続く。
左写真のあたりは特に石段の斜度がきつかった場所。ガイド君も息が切れてペースダウン。鉄管の手すりにつかまりながら一歩一歩登るしかない。
野生のサルがいた。
参詣路から南側を見たズェガビン山脈。
屏風のように薄っぺらい山脈だということがよくわかる。
全行程の2/3のあたりにあった茶店。
左半分が店舗、右半分が住居で、老夫婦+犬2頭がここで寝泊まりしながら商売をしているようだった。
日陰になるベンチもあり、ここでほとんどの参拝客が一休みしてゆく。
この茶店から先は、たじろぐくらいの急な石段がしばらく続く。
駄菓子も売っている。こうした袋菓子はほとんどがトウガラシで味付けしたドライフルーツか、ヒマワリの種などの自然食品。
ガイド君たちはスモモの酢漬けのお菓子を購入していた。
エロゲ的なイラストの入ったドライフルーツ。
私はタイ製のジュースを買った。
名前は「ここぞ」。
果汁分のほとんどない合成ジュースだけど、甘くて疲れたノドにスッと入っていく。
この売店や山頂で売られている商品はすべて歩荷で上げているようだった。
少し登ったところに、ほこらがあった。
日本の霊山ならば参道の途中に石碑や石仏が点在するが、ズェガビン登山路はほぼ山道で、この祠が最初で最後のお堂。
ほこらの中には男女の神様。おそらくズェガビンの兄妹神だ。
ほこらの内装は鏡をモザイク状に貼り付けた意匠。これを「モザイクミラー」という。電飾と同じセンスで「とにかく光らせたい」という欲求から生まれたものだろう。
ほこらを過ぎると、道ばたにパゴダがちらほら現れる。
ただし登山道から離れているパゴダには立寄る余裕はない。
山頂が見えてきた。
参道はすこし緩やかな尾根道になるが、歩く距離が長くなるだけなので、むしろ石段の連続を休憩しながら登るほうがありがたい。
しかも下り坂って、下山時に地味にダメージになるんだよね。
間近でみるとやっぱりすごい山容だな。
そしてこんな場所にパゴダを建てようって考え、実行した信仰の力に敬服を覚えずにはいられない。
山の上に見えるパゴダのあたりに人がいる。
あそこまで行くのか。
それにしても石段がかなり無茶な角度でついているな。
石段を登る途中、振り返ると尾根道が見える。
下から見えたパゴダまで登った。
チャウカラッパゴダが一望できる。
ここまで来ると山頂まではもうすぐだ。あまり休憩せずに一気に山頂を目指す。
山頂部分に到着。登山口からはちょうど2時間だった。
右の壁に「ここで履物を脱げ」というようなことが、親切にも英語で書いてある。下駄箱はないのでサンダルは石段の途中に脱いだり、邪魔にならないような場所に適当に並べて境内に進む。ここに置ききれるほどしか参拝客はいないのだ。
山頂で一番大きなメインのパゴダ。
大きいとは言っても、ミャンマーの名だたる巨大パゴダと比較したらずいぶんと控えめなサイズだ。
それでも、山頂までほとんどの建材を歩荷したと思われるのでよく作ったものだと思う。
守り本尊の「牙のないゾウ」に拝礼。
イラストもついているので分かりやすい。
パゴダの北側には、ケータイの基地局みたいな尖塔。この尖塔、だいたいパゴダとペアであるような気がする。日本の相輪塔に外観上は近いが、たぶん関連はないだろうな。
ここではゾウの背中に載っている。
境内の周囲は見晴らし台になっている。
疲れ具合から、標高は600mくらいではないかと推定。
西側の風景。
下に見える山はチャウカラッパゴダからは見上げるような山だったのだが、ここからは小山にしか見えない。
真下は見えないが数百メートルは絶壁なのだろう。飛行機の窓から見ているようなすばらしい鳥瞰。
この真下あたりに兄妹神の形があるはずだ。
北西方向の風景。
パアン市から続く道が見える。朝、この道を来たのだ。
山の中にいくつかホテルが建設中。将来この辺りがカレン州の観光の中心になることを見込んでいるのだろう。
北側の尾根。
北側の尾根伝いにもいくつか小さなパゴダが見えた。
この建物の中を通って進めば、先に見えるパゴダまで行けるのだろう。最先端にあるパゴダへの道は馬の背の尾根道だ。
行ってみたい気もするが、まあ見えている通りでそれ以上のものはないだろう。
シャッターの降りた堂があった。
この山頂の建物にはみなこんなシャッターがついている。
中には赤い装束を着たナッ神。ズェガビンの兄妹神か。
その右側には、行者っぽい人がいる。手に教典っぽいものと、髪の毛らしきものを持っている。
そのさらに右側にはハンサーに乗った女神。これ、あとで通訳さんに聞いたところ日本の仏教の観音さまに相当するものらしい。
鐘つき柱。
小さなパゴダがあるが、廻りに柵があり参拝を拒んでいる。
たぶん入っても怒られないとは思うが。
衆寮か。信徒の宿泊所かもしれない。
右側のパゴダの基壇に並んでいるたくさんのドアも気になるところだ。
おっ、何かゲームっぽいことをしている!
お賽銭箱を利用したゲームだった。いや、占い付きのお賽銭箱と言うべきか。上にお金を投げ入れると、スリットが4つあってそれぞれが占いの結果の書いてある段に落ちるようになっている。
ミャンマーには以前は硬貨もあったが、現在は硬貨が流通していない。日本円の10銭相当までがすべてが紙幣だ。そのため、ゲーム系賽銭箱がうまく機能しなくなっているのが残念。ここでは賽銭の代わりに、お供え物のローソクを投げ入れていた。
賽銭箱は2つあり、左側は来世占い、右側は現世占いとなっている。そして現世占いの最上段と最下段は、目隠しがしてあって横から覗かないと見えないようになっている。
それぞれの占いの意味はたぶん写真のとおり。
天界と精霊界が、自分で書いていてもよく違いがわからないが、上位の神さまに生まれ変わるか、そこそこの神さまに生まれ変わるかみたいな感じか。
来世占いの書き割りを見ていこう。
最上段は
輪廻転生のループから解脱した場所であり、ここに行ったらもう転生することはない。
天界(ブラフマーの世界)。
神さまの国。
日本人が考える「神」とだいたい近いと思う。
精霊界(ナッの世界)。
天界と絵的な違いもあまり感じない。服装(鎧?)のデザインがちょっと違うくらいか。
正確な表現かどうかわからないが、日本でもアマテラスやイザナギのような神さまと、道祖神や竈神のような神さまはひと括りにはできない。その違いのようなものがミャンマーの神にもある。
人間界。
なお、ミャンマーの輪廻転生には、地獄・餓鬼・修羅などの悪いルートもあるのだが、この占いは最悪でも人間界である。
正直、私は人間界でいいかな・・・。
続いて、現世占いの書き割り。
一番上は宝くじに当選、というような意味だと思うが、ビジュアル的にお寺にそぐわないためか、目隠しがされたのだろう。
試験に合格。
うん、わかりやすいビジュアルですな。
計画が叶う。
いろいろなことが叶うようなイラスト。ある意味この段は万能なのでは?
ビジネスに成功。この段も目隠しがついていた。自分が資産家になり他人を働かせるようなイラストだからか?
ちなみに、今回の旅ではゲーム系賽銭箱はここでしか見かけなかったが、13年前の旅では電動でターゲットが動く賽銭箱など、かなりアグレッシブなものも見た。硬貨がなくなって時間がたったことで、そうした素晴らしい物件が減っているのではないかと気掛かりだ。
東側には庫裏や食堂がある。
その一角に売店と食堂があった。
ズェガビン山のシルエットをプリントした手ぬぐいとか、オリジナル商品もあった。
ここで昼食をとってから下山した。
所要時間は、上り2時間、山頂滞在1時間(昼食含)、下り2時間で、合計5時間みればゆとりがあるだろう。
ズェガビン山にはロープウエイを建設する計画で、2015年には完成するという話もある。2014年の年初の時点で着工している様子はなかったが、数年のうちにはロープウエイによって気軽に山頂へ登れるようになるだろう。
日本の山寺の場合、登山道の途中に楼門や宿坊があったりして油断ならないのだが、ここズェガビンの場合は登山道はほとんどがただの山道なので、ロープウエイで山頂まで行くので十分だろうと感じた。
※ 2015年に、東参道からもう一度山頂まで登った。その時の記事はこちら→
(2014年01月25日訪問)