「繭検定所」とは、農家から出荷された繭の等級を検査する施設である。かつて各県に検定所が作られたが、それを定めた法律「蚕糸業法」が廃止されたのにともなって、繭検定所も廃止された。群馬県の繭検定所はいまでも建物が残っているので貴重な存在だ。
場所はJR前橋大島駅の南。小学校のとき、社会科見学でこのあたりの家具工場と給食センターを見学したような記憶があるが、繭検定所を見学したかどうかははっきり思い出せない。
群馬県の繭検定所は昭和51年に朝日町からここに移転、平成18年まで使われた。
施設名は最終的には「群馬県繭糸技術センター」と変わり、現在は総社町の蚕糸技術センターに統合されている。
案内図が見えた。文字はほとんどかすれて読めなくなってしまっているので、書き入れてみた。(拡大図)
拡大図を見ると、その施設の構造はほぼ製糸工場と同一の構成であることがわかる。繭の検定では実際に繭から糸にしてみて、途中で糸が切れる確率などを数値化する。そのために製糸工場の繰糸機と似た構造の「検定機」という機械を使って繰糸をするのである。
この施設、ほぼ製糸工場と言ってもいいようなものであり、チャンスがあれば見学したいものだ。
案内図の平面図には二階が書かれていないが、外から見る限り、所長室、庶務課の上階は会議室だったのではないかと思う。受付所から調査課の上階は繭倉庫であることが外観からわかる(左写真)。
建物自体はさして風情があるものでもないが、蚕糸業がもはや産業遺産になりつつあるので、他用途への転用で現況が改変されるのは惜しまれる。前橋市の製糸の歴史を学べる博物館にでもできないものか。
敷地内には「蠶霊塔」がある。
「昭和七年十一月建立」とあるので、旧検定所から移設したものなのだろう。
移設したときのものと思われる寄贈碑がある。
背面には「寄贈者、群馬県蚕糸振興事業協会、群馬県養蚕農業協同組合、群馬県製糸協会、上毛蚕種協会、群馬県繭糸商業組合、群馬県国用製糸工業組合、群馬県玉糸生糸協業組合、前橋乾繭取引所、昭和五十一年三月」とある。
国用製糸や玉糸製糸がそれぞれ別の組合組織を持っていたことがわかり興味深い。
(2014年12月27日訪問)