AH1号線のナンロン峠を越えると、ナンロン地区へと入る。
峠を越えてすぐの小字はコクメイ村である。
その村の道端で見かけた民家。
何か特別な民家というわけではない。カレン州の伝統的住居の一例として写真を撮ってみた。
独立基礎の高床式の住居になっていて、床下は作業場や物置などに使われる。この家では丸木舟や馬鍬が置いてある。湿田を耕作する農家なのだろうか。
壁は板、屋根は波板であり、独立基礎もコンクリブロックで近代の部材を使って作られている。このあたりでは中流の家であろう。これが古い建築であれば、屋根はインペというホウノキのような広葉樹で葺かれ、壁はヤシの網代、基礎は掘っ建てとなるのだが、基本的な作りはこの家も同じである。
特徴的なのは、家への入り口が取り外し式のハシゴとなっていることだ。野犬などの侵入を防ぐ工夫らしい。このようにずらしてあるのは、留守中という意味かもしれない。
また、ハシゴの柱が左右で違う長さに切ってあるのも特徴だ。以前、ハシゴの長さが違うのは「未婚の娘がいる目印」というような話も聞いたのだが、見る限りほとんどの家で長さが違っている。むしろ同じ長さのハシゴはこれまでパアンでは見たことがない。これ、実はハシゴの上下を間違えないようにするというような目的もあるんじゃなかろうか。
この家は北側に吹き放ちの縁があり、おそらく縁に沿って部屋が並ぶ間取りだろう。ここが縁ではなく、廊下のように室内になっている間取りも見かける。
床下の南側はインペ葺きの日よけがついている。
南側には小さな窓があるが、採光としてはあまり役には立ちそうにない。電気も引いてないようなので、日中でも室内は薄暗いだろう。
壁からでっぱっているのは仏壇である。
家の周りの茂み。
小さなクシ状の葉は、オジギソウだ。日本ではお金を出して買う植物だが、熱帯では厄介な雑草として繁茂している。
(2014年07月13日訪問)