仕事で使う事務用の棚を買おうと、パアン市の家具工房を4軒ほど回った。そのうちの2店を紹介しよう。
ここは店、というよりも工房が小売りもしているというような場所だった。
室内には作りかけの棚の部品がたくさん並んでいる。
「書類を整理したり文房具や事務用品をしまう棚がほしいんだけど」
「棚はこれだよ」
この嫁入り道具みたいなゴテゴテの食器棚しかないの?
しかも、外側はニスが塗ってあって、遠目には立派だけど、近くでみると裏板などすきまだらけではないか。
ニスが垂れて汚れてるし。
触ると手にトゲが刺さりそう。
戸板を彫刻していた。
基本的にすべて無垢材。合板などは一切使わない。というか存在しないのだろう。
けっこう丹念に彫っている。
こういう所には力が入っているな。
木彫の道具。
希望するようなシンプルな棚がなかったので、何軒も回ってみた。
ここは3軒目の店。
こちらはおもてが店舗になっていて、完成品のテーブルや戸棚が並んでいる。
でも、やっぱり19世紀末のネオルネッサンス時代みたいな意匠の家具ばかり。イギリス植民地時代の影響なのだろう。しかし20世紀に入ってからの、バウハウスだのモダニズムみたいな合理主義、機能主義はまったくカレン州には入ってこなかったのだろうか。
飾りッ気のない家具を普通に作ってほしいだけなんだけど。なんだか、安売衣料品店で「なんでこんなワンポイントを付けるんだよ、これがなければ着られるのに」と買うものがない思いに似ている。
値段もけっこうする。カレン州の人々の月給の2倍、3倍もするのだ。日本で月給の数倍も出したら、孫子の代まで使えるような良いものが買えるだろう。
今回は決して良いものを買おうというのではなく、IKEAやニトリの家具の廉価版みたいなものを探していたのだが、どうやらパアン市内では簡単には手に入らないようだ。
店舗の奥は工房になっていた。
ここでも扉の彫刻に余念がない・・・。
結局、市内に1軒だけあるデパートの家具売り場で、中国製の安かろう悪かろうのスチール棚を購入したのだった。すぐにカギが壊れたり、戸板が曲がったりしたが、なんとか使い続けている。
マーケットへ行けば何でも売っているように見えるこの町だが、いざ本当に使おうと思って探すとノート1冊、ハサミ1つでも日本で思うような品質のものは手に入らない。
(2014年07月21日訪問)