ザタピン町から3kmくらい走っただろうか。
里門が見える。隣の村へ着いたのだ。
「里門」とは、当サイトの造語で、住居や寺院の存在と関係なく、集落に建てられている門のことだ。
私が滞在しているカレン州パアン市方面にもいくつかあるが、どちらかというとモン州のモーラミャイン市方面に多い印象である。
いまいる場所はカレン州ではあるが、モン州との境界であり、生活圏としても文化圏としてもモーラミャインに依存しているのではないかと思われる。
橋が見えた。
中央が高くなっているということは、下を舟が通ることを想定しているのだろうか。
橋の上から覗いてみると、小さな船着き場があった。
この川はジャイン川からの支流で、先ほど見た火葬場のところを流れていた川と同じだ。
いまのように道路が舗装される以前には、村はこの川の舟運に頼った時代もあったのではないか。
橋を過ぎたところに、2つ目の里門があった。
橋の下でくつろいでいる村人がいたので、村の名前を訊ねたら「コッティン村」とのこと。
50mも進まないうちに3つめの里門がある。
これまで里門は村境に作られると考えてきたが、このように村の中に点々とある場合もあったのだ。機能的には、門ではなく茶堂に近い。ただし茶堂にはナッ神が祭られることが多く、あくまでもお堂なのだが、こうした門には神様は祀られていないので区別はするべきだろう。
4番目の里門。
えっ? すごい密度なんだけど・・・
5番目の里門。
6番目の里門。
7番目の里門。
緑の多い村だなあ。
7番目の里門は奥行きが2間ある。
交差点に建てられており、奥の一間部分が十字路になっている。
写真の奥には8番目、9番目の里門が見えている。このあたりは30m間隔くらいで門が建てられている。
8番目の里門は、この村唯一のお店が併設されていた。
駄菓子やジュール、石鹸くらい買うことができる。
お店の前はバンダーという樹が枝を伸ばし、日陰を作っているのが涼しげ。
9番目の里門。
10番目の里門。
10番目の里門をくぐると、唐突に僧院で行き止まりになっていた。
目指していた小山はもうどこにも見えない。どうやら道を間違えたか、あるいは、あの小山へ行く道がないのかいずれかなのだろう。
あとで地図を見てみたら、この村は林の中でみごとに行き止まりになっており、ジャイン川の河港ですらなかった。推測だが、僧院の門前町として発達したのではないか。
それにしてもわずか500mほどの距離に10基の里門が並ぶというのは、ものすごい密度である。この後もいくつもの村を見てきたが、この村の里門密度を超える村はいまだに知らない。
見たところ家々はそれなりに立派で、農村というわけではなさそう。
何で暮らしを立てているのだろう。
道路から家までは橋がかけてあるので、季節によってはぬかるむか水没するのかも知れない。
コッティン村は特に観光でどうこうという場所ではない。せいぜい僧院がある程度だ。
だが、私が訪れたカレン州の村のなかでは際立って強い印象を残した。
辺鄙な場所にあるが世捨て人のように暮らす寒村というわけではなく、ほどよい活気があり豊かで美しい村である。もう行く機会もないだろうが、きっと長く記憶に残るだろう。
(2015年04月26日訪問)