ミャンマーの11月の満月祭「ダザウンダイン祭り」については、2014年の様子を紹介した。2014年の満月祭は私がパアン市入りする以前に終了していたのだが、メインイベントの気球飛ばしが台風の接近によって順延になったため、気球飛ばしイベントだけを見学できたのだった。
今年は、ダザウンダイン祭りの当日にパアン市にいたので、その祭りの全容を見に行くことになった。
会場のアジヤヤマペヤ僧院に近づくと、紙幣の飾り物を載せたトラックが目立ってくる。
このお札は、個人がお寺に寄進するものなのだ。
緑色っぽく見えるお札は、1,000チャット。日本円に換算すると80円の価値だが、ミャンマーと日本は所得が10倍違うので、ありがたみはとしては千円札で出来ていると考えれば良い。
日本だと、これほどの負担額をお寺に持っていくのは戒名代くらいではないだろうか。ミャンマーではそれが毎年なのである。
ディスコサウンドをガンガンに流す音楽屋のトラック。
ご当地の祭りや結婚式で登場するはた迷惑としか思えないサービスである。
その後ろには小さなステージがあって、ここにしがみついたオニイチャンが全身でビートを刻む様子は、映画『Mad Max 怒りのデス・ロード』そのものといった風情を醸し出す。
屋根上に不気味な張りぼて人形を載せた音楽屋トラックもあった。
こんなトラックが何台も境内に集まるので、境内はかなりの騒音になり、場所によっては耳を塞がないと歩けないほど。
お札で出来た樹もどんどん集まってきて、その額を競い合うように並べられる。
赤っぽく見えるお札は、額面が5,000チャット。
トラックに積むだけでなく、近所の人は徒歩で飾りを持ち込む人もいる。
この人が持っていた飾りは、10,000チャットで出来ている。
最近登場したミャンマー貨幣の最高の額面のお札で、円換算で800円の価値がある。カレン州の一般的な給与の半年分くらいの金額が無造作にぶら下がった状態なのである。
「世界寄付指数」というものがある。個々の人が人助け、寄付、ボランティアをしたかどうかを数値化したものでミャンマーはほぼ毎年1位になっている。この様子を見ればその順位にも納得すると言うもの。
ちなみに2位以下は、アメリカ、カナダ、アイルランドなど英語圏の国(キリスト教国)が占め、次に上座部仏教の国々が続く。日本はアジアでは最下位争いの順位にいる。日本人の精神性を支配する教義は仏教ではなく儒教だと思うが、儒教の国は軒並み低順位。
前回のときは、祭りが順延されたあとだったので、露店はほとんどなかったのだが、今回はにぎやか。
露店だけでなく、歩き売りの人たちも揚げものやオモチャ、風船などをもって行ったり来たり。
頭の上にものを載せる売り子さんは、日本ではあまり見ないので異国情緒満点。
焼き鳥屋があったので、串焼きを買ってみた。
スズメと思われる小鳥が3羽串に刺さって揚げてある。
焼き鳥というよりは、唐揚げに近いか。
よく揚げてあるので、頭から骨やクチバシも含めて丸かじりできる。みずみずしさはなく、裂きイカのような噛みごたえがあり、噛むほどに味がでてくる。
お寺の講堂のほうで、食事が振る舞われているというので行ってみることにした。
1年前の写真と見比べると、建設中だった建物が完成に近づいていることがわかる。
講堂の1階が食堂になっていて、大勢の人が無料で食事をしていた。
テーブルは、ひとグループが食事を終えると、いったんすべて片付けられ、私たちが案内されると、新しい料理が運ばれてくる。
これらの食事の準備は、この日の朝2~3時ごろから始まるのだという。
お代わり自由のミャンマーカレー(ヒン)でお腹がいっぱいになる。
次に、講堂の2階に連れて行かれた。
何があるのかと思ったら、2階にもたくさんのテーブルが並んでいる。
2階は食後のデザートを振る舞っているのだった。
またテーブルがひとつ準備され、そこには、到底食べ切れないようなお菓子やフルーツが並べられる。
飲み物はお茶やコーヒーが出る。
2階の祭壇にお札で出来た樹が大集結。
次々に運び込まれてくる。
こうした寄進でお祭りの風船や食事が賄われているのだろう。
お寺の小僧たちも集まってきた。
ミャンマーでは子供のうちに一度は出家することが多い。
この日はお祭りなのでオモチャで遊んでもいいのだろうか。
それにしても修行僧がライフル銃のオモチャとは他の国ではちょっと見られないビジュアルだ。
もっとも、この祭りの日にはKNLAの民兵たちも自分たちの銃器を見せびらかし、しかも景気付けにぶっ放すので、子供がオモチャの銃を持っているのなんて可愛いものである。
講堂の二階から見おろすと、獅子舞のようなものが始まっているのが見えた。
行ってみよう。
音楽やのトラックが何台も集結して、すさまじい音量で音楽を流している。
民族衣裳をまとい、お面をかぶった3人の演者がでてきた。
右から2人は村人、左にいるのは精霊じゃなかろうか。
悪霊に憑かれた水牛が村人を襲っているという場面か?
赤い服の村人は、人をおんぶして逃げ惑っている。手前の顔はダミーで、負ぶさっているように見える部分が演者。
物語があるのだろうが、見ていてもあまり感じられない。
お寺の喧騒を抜け出して、気球飛ばしの会場へ向かった。
修行僧たちも、この日は祭りを楽しんでいいようだ。
(2015年11月26日訪問)