昼飯でも食べようと、岡山市街をぶらぶらする。いまにしてみれば、せっかく見たアーケード街や天満屋の屋上遊園地などを紹介すべきなのだろうが、どうも一般的な商業施設そのものは写真を撮りにくく、これまでもあまり記事にできていない。
アーケード街を外れて、市電の走る大通りに出てみた。
そこで見かけた古典復古様式の建物。
こういう建築物は大正時代の金融機関に顕著に見られる。調べてみたら、やはり竣工は1922(大正11)年の建物だった。日本銀行岡山支店として使われたようだ。
おそらく内部は吹き抜けで、一階はカウンターや職員の机が並び、二階部分は外周にキャットウオークがあるという構造だと思う。
現在は使われていないようだった。
ここは2005年に市民ホールとして改装され、ルネスホールという施設に生まれ変わった。
この施設のことをいうわけではないが、私は歴史的建築をくりぬいて、別の用途に改造するというのはあまり好きではない。なぜならば建物に与えられた機能美は、その建物が持つ本来の機能と一体となってしか発現しないものだと思うからだ。ましてホール等への転用は、音響効果などにおいてどうしても不利であり、新用途としても不十分な機能しか提供できないだろうから。
一時期、歴史的建物の薄皮一枚残してくりぬくような再利用が、景観の保護だともてはやされ、学生だった私は無批判にそれがいいことなのだと思っていた時代もある。だがいまではそれは死者の蝋人形を見てその故人を評価するような薄っぺらな理解、悪趣味にしか思えないのだ。その歴史を知るためのそのままの形で保存できないのなら、いっそ更地にして新しい目的にあった規模、使い勝手のよい施設を建て直したほうがいいのではないかとさえ思ってしまうのである。
(2003年04月28日訪問)