日咩坂鍾乳穴がある豊永台地の上は、ドリーネだらけである。
ドリーネとはカルスト台地にできる窪地のことで、①地下の鍾乳洞が崩落して陥没してできるケースと、②水の流れで直接的に地表が浸食されてできるケースとがあるという。
①は日咩坂鍾乳穴へ入洞するときに降りた巨大なドリーネなどがそうであり、②は日咩坂鍾乳穴に2ヶ所あるとされる天窓の地表側にできている窪地が該当するのだろう。②のパターンには、ⓐ中央に明確に吸い込み穴が開口しているケースと、ⓑ土砂が詰まっていて地表には明確に穴はないが雨水だけが浸透していくケースとがあるだろうと思う。ⓐは誤って人が落ちる危険があるため、人里の近くでは埋め立てられてⓑの形態になっているものが多いだろうと想像される。
日咩坂鍾乳穴神社の近くにあった小規模なドリーネ。
明確な吸い込み穴はなく、中は平坦に土が堆積していている。おそらくかつては耕作地として使われていたのではないかと思われる。
ドリーネはその成り立ちからして水はけがよいわけで、特定の作物の栽培には適しているだろう。
日咩坂鍾乳穴神社のすぐ北側にある集落。
なんと、小さなドリーネの中が畑地と宅地になっている。ドリーネの中に人が住んでいるのだ。
私がこれまで一度も想像したことがなかった風景だ。
一見すると、奥のほうが下り坂の単なる丘陵地帯の景観のようにしか見えない。
だが、この奥の銀色の屋根の家のあたりはすり鉢状の穴の底で、周囲の土地のほうが高くなっているのである。
すごいなぁ。ここで暮らすのはどんなだろう。自分の敷地に降った雨は自分の敷地の中央に集まって地下に消えていくのだ。閉じた世界の所有者になった感じがするのではないか。
(2003年05月01日訪問)