国道180号線を南から来ると、新見市街地に入る直前に山並みが川にせり出して平地がすぼまっている地形がある。寺はそのすぼまり切ったところにあるため、いやがうえにも目立つ。
そしてなによりも、異様に小さい五重塔が通る人々の目を釘付けにする。
なんという不思議な風景だろう。その圧縮された感じは箱庭のようでもあり、鉄道模型のジオラマのようでもある。意外に悪い感じはせず「五重塔なんてこれでいいんじゃね?」などと思っている自分がいる。
敷地のほとんどは墓地であり、寺の建屋のある面積は極度に狭い。本堂を中心として、左側に庫裏、右側に地蔵堂が密着して建っている。
本堂の右側の昼間地蔵堂。
「昼間地蔵」が何を意味するのかよくわからないが、日限信仰の一種か。
たとえば、日が暮れるまでに願掛けの内容をかなえてくれるとかか。
地蔵堂の内部の様子。
地蔵は舟形光背の石仏で、腰のあたりから折れている。そのため別名を「腰折地蔵」ともいい、腰痛を持つ人はこの地蔵の腰をさわってから自分の腰をさわると腰痛が治まるといわれる。
本堂の軒から見た五重塔。
小さな塔というと、隣りの兵庫県養父市の国道312号の町外れに三重塔があって、何となくイメージがかぶってしまう。
あるいは、さらに小さな塔でいえば群馬県神流町の千手寺でこれに似た光景が見られるが、この恵重寺のほうがいずれの塔よりもバランスが優れている。
(2003年05月02日訪問)
異界神社 -ニッポンの奥宮-
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本田 不二雄 (著)
「ニッポンの奥宮」に往って還ってくること。そんな不要不急の旅でしか得られないものが確かにある。そんな神域に行かなければ埋められないピースが、われわれの心の中にはあるのだ。
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