ノブボー山・プレイヤーマウンテン

ミャンマーキリスト教の聖地。

(ミャンマーカレン州タンダウンジー)

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タンダウンジーの町のどん詰まり、ひときわ高い山がノブボー(NawBuBaw・နော်ဘူဘော)山、通称プレイヤーマウンテン(Prayer Mountain)である。

ミャンマーの各地の霊山はそのほとんどが仏教の聖地になっているが、ここは山頂をキリスト教が管轄している。こうした霊山はミャンマーでここだけだという。

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富士山のようなおむすび型の山頂に大きな十字架が建っている風景は、テレビやカレンダーなどでときどき取り上げられるので、ミャンマーで暮らしていれば一度や二度は目にすることになる。

何度かメディアで見たうえでも、実際に間近で見ると目を奪われる奇景だ。単に大きな十字架があるというだけでなく、登山道と思われるルートに点々と建物がある。しかも形や色がひとつひとつ違っていて、まるで箱庭みたいだ。

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ふもとには事務所と僧房のような建物がある。もしかすると信者の宿泊所かもしれない。

この建物の前まで車で乗りつけることができる。

全国からクリスチャンたちが引きも切らず参詣しているという状況ではなく、わずかな駐車スペースで足りているし、門前町のようなものもまだない。特別な日をのぞけば1日あたり100~200人程度しか参詣者がいないのではないかと思われた。

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手前のクリーム色の建物が事務所。トイレを借りて、入場料のつもりでいくばくかの喜捨をした。

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事務所の前が登り口になっている。ここから山頂までの標高差は大したことはない。たぶん50m程度だろう。

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登り口にはプレイヤーマウンテンの説明とスペックシートがある。

ミャンマー人は好きだよなあ、スペックシート。

階段の段数 :374段
階段の幅  :1.82m
階段の長さ :170m
海抜    :1,470m

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登山路はすべてコンクリートの階段なので、裸足でも上れそうだが、ミャンマー人たちも履物のまま登っていた。

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しばらく登ると小さな小屋が現れる。

同じ形の小屋は二つとない。それぞれに特徴があるように工夫されている。

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小屋の内部は人がひとり入れるくらいの狭いスペースになっていた。

中にこもって祈りを捧げる小屋なのだろう。仏教寺院では瞑想堂としてこれと似たような建築物がある。キリスト教にこうした建造物が世界的に存在するのか、それともミャンマー固有なのかは不学のためわからない。

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キリスト教のアイコンをダイレクトに立体化したようなデザインが楽しい。

十字架の形をしていたり、小さな教会堂のような形をしているものもある。

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こちらは手のひらを合わせた形。

こういう発想はいかにもミャンマーという感じ。キリスト教がいい方向にローカライズされている。

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扉が閉まっているのは使用中なのだろうか。

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道から外れて林の中に隠れた秘密基地的な瞑想堂もある。こういう発想、楽しいなぁ。

階段は途中から山の東斜面にある崖を登っていく。

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ここから見える高い山脈の向こうはカヤー州だ。

森の中に点々と人家が見える。コーヒーを栽培している村だそうだ。車で行くことはできず、徒歩かかろうじてオートバイが通える山道があるという。

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洞窟っぽいものがある!

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岩の隙間が通れるようになっているだけだった。洞窟といえば洞窟だが。

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その最深部には「ゾウの鼻」というナニカ(・・・)があった。

どれがゾウの鼻なのかはよくわからず・・・

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いよいよ山頂に到着。

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山頂部分は履物を脱いで裸足になる。

ミャンマーの仏教寺院では裸足になるのが当然だが、キリスト教にもミャンマーのローカルルールが適用されているのだ。

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ステージと見晴らし台がある。

100人くらいはここで休憩したり寝たりできそう。

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十字架は鉄骨と鉄筋でできていた。

この十字架のように真剣な信仰に裏打ちされているものは、鉄骨だろうがプラスチック製だろうがかまわないと思う。

日本人(というよりも西洋文明か?)は何世紀も時代を超えてきた遺物や変わらないデザインだけをありがたがって拝み、きのうきょう出来たような新進の寺や仏は珍妙なものとして軽んじる。ミャンマー人から見たらそれは理解しにくいことではないか。

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山頂の教会堂は船の形をしている。

聖地といっても、日本の霊山みたいに格式ばって立入禁止、撮影禁止みたいな感じはまったくなく、参詣した人たちが楽しく過ごせる雰囲気に満ちている。

船のへさきに立って記念撮影をするのが定番みたいだ。リア充のカップルがディカプリオのマネをしそう。

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教会堂は船尾のほうから入れるようになっている。

小さな塔を持った、単塔式単廊直線型教会堂だ。

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塔の内部。見上げると鐘が下がっていた。

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教会堂の内部。

私は教会では求められないかぎり自分からは礼拝はしないことにしている。異教徒で信仰がない者が礼拝するのは失礼だろうと思うので。

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山頂部分の裏手のほうにも瞑想堂があった。油断できない。いちおう瞑想堂はすべて見たと思う。

山のふもと、タンダウンジーの町のほうを眺めたところ。

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中央に見える山の山頂は、Karen New Year Hill と呼ばれる場所らしい。

ここの丘もカレンダーなどで見ることがあり、正月に祭礼が行なわれる場所なのだ。こちらはキリスト教とは別扱いで、おそらく仏教にもとづくものですらない。日本人にとっての神道に近いような、アニミズム信仰がミャンマーにはある。

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今回は団体行動なのでそちらへ登ることはできなかった。遠くから見ると依り代みたいな工作物がいくつか見える。

タンダウンジーはまだ観光客が少ないが、今後は外国人向けの観光地として発展するポテンシャルは充分にあると思う。いつか個人の観光で訪れて、あの丘に登ったり、町内にたくさんある質素な教会をくまなく廻ったりしたいものだ。

(2017年01月06日訪問)

歴史物語ミャンマー 上

単行本 – 2011/11/1
山口 洋一 (著)

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