リアス式の深い湾の奥にあるいわゆる天然の良港だ。その地形を活かし、かつては北前船の風待ち港として繁栄したという。
湾をめぐる道路には家々は妻を向けており、海岸側にはほとんど開口がない。日本海側の海岸線でよく見かける風景だ。
潮風をさけるためだろうか、竹垣を立てた家もあった。
港町の常で、海岸近くには「駐車禁止」の看板も目立つが、大きな町であり町外れに駐車可能な場所もあるので観光はしやすそう。
町は大きくわけると、湾に流れ込む八千代川をはさんで東西にわかれている。
町の中心街は八千代川の東側で、そこは海岸通りと、
ひとつ引っ込んだところにある裏通りに沿って人家が並んでいる。
家々は海岸線に対して妻を向けているから、裏通りも妻に面している。
そのかわり枝道、つまり魚の骨でいうあばらの部分は家の平が面していて、店はこの枝道に面して作られている。
いまはすべてしもた屋になってしまっているが、かつては宿屋や茶店、商品を扱う店々で繁栄したのであろう面影が色濃く残っている。
路地の多くにドブ板があるのも港町らしい風情だ。
裏道を歩きながら、枝道を覗き込むのが鷺浦散歩の楽しみかただろう。
店は明るい開口を持ち、ガラス障子やガラス唐戸の造りが多く見られる。ここが漁村ではなく商業港だったことがわかる。
街角で見かけた気圧計。
気圧計はこれまで当サイトでは大浜という港町で紹介しているが、探せば普遍的に見つかりそうな気がしてきた。
街角で見かけた井戸。かつては共同で使われていたのだろう。
「
しっくい造りの妻には洒落た形のナマコ壁がしつらえられている。
この周辺には大きな商家が目立つ。
すごく狭い枝道。
見上げると、ケラバの桁に漆喰の装飾があり、妻には鶴の鏝絵もある。
千本格子のある店。
八千代川の西側の地区は、東地区と雰囲気が違い、道路がクネクネと曲がった城下町を思わせる地割り。館か城でもあったのかという風情の場所だ。
視界の利かない迷路のような町並みを楽しめる。
鷺浦はいまのところ土産物屋ができるような観光地ではないが、あまり手垢がついておらず町並みが好きな人には充分に楽しめる町だと思う。
(2005年09月02日訪問)