ドリーネの中の草庵

ドリーネの中に粗末な庵があった。

(ミャンマーモン州モーラミャイン)

きょうは午前中で仕事が終わって、午後は時間があいた。

でも仕事の上でいずれ必要になる資材があって、この時間でモーラミャインまで探しにいくことにした。仕事上の買い出しは基本的に現地のスタッフの車で行くのだが、モーラミャインは隣りのモン州になるため自家用車が使えない。

その事情を説明しておこう。

カレン州内を走っている自家用車の多くがナンバープレートを付けていない。あるいは、飾りの偽ナンバープレートを付けているだけの車だ。ミャンマーの法律にしたがって正規の四輪車を持つには日本人の私でもひるむほどの大金が必要なのである。しかしカレン州はタイと国境を接しているので、様々な勢力が車を密輸していて、日本の中古車が日本で買うよりも安く手に入るという状態。長い間内戦が続いたこともあって、中央政府からはお目こぼしされているのがカレン州の現状なのだ。

だがそういう治外法権的な運用が許されるのもカレン州の中だけ。ナンバープレートのない車は他の州で走ったら交通違反で捕まってしまう。

なのでモーラミャインへ行くには乗合バスとか、軽トラの荷台に乗るトラックバスなどで移動しなければならない。現地へ行っても、お店をまわるごとにタクシーを見つけなければならないし、そもそもチョコマカ走り回って、どんなお店があるのかをこまめに探すことなど不可能だ。

私のオートバイは正規のナンバープレートを付けてあるからモン州も走れる。きょうは、モーラミャインの郊外にまだ行ったことがないホームセンターもあって、そこをひとりで調査するつもりなのだ。

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ちょっと天気がよさそうと思って宿を出たが、15分も走らないうちにモン州方面から黒雲が近づいてきた。

でもきょうは雨合羽を持ってきているので、雨が降ってもモーラミャインまでたどり着く覚悟。

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しかし途中で余りにも雨足が強く、道路の穴ぼこがよく見えない状況になり、茶堂で雨宿りすることに。

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雨が小降りになったので雨合羽を着て再びモーラミャインを目指す。

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30分も走らないうちに青空が広がり、気温が一気に上昇。雨合羽を脱いで、オートバイにしまった。

なにしろここは熱帯の国。陽が出れば上下風通しのない服装などしていられないのだ。

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そんな調子で、合羽を出したりしまったりしながらひたすらモーラミャインを目指す。

パアン・モーラミャイン街道はサルウィン川の後背湿地に盛土して作られた新道なので、雨季になると周囲の荒れ地は水没して一面の湖になる。

この街道、ちゃんと確認したことはないけれど、開通してから30年くらいしかたっていないんじゃないか。自然堤防の上にある村々を無視して、定規で引いたような直線でパアンとモーラミャインを結んでいる。

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パアンから約2時間。目的のジョジャーホームセンターへ到着したときには、ちょうど合羽を着ている状態だった。つまりスコールの中の到着。

駐輪場に屋根があったので合羽を脱いだが、走行中に染み込んだ雨でシャツはびっしょり。

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でも店内はキンキンにエアコンがかかっていたので、シャツはすぐ乾いた。

店内は広く、品揃えはそこそこだったけれど、探していたものは見つからず・・・。

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ミャンマーのホームセンターと日本のホームセンターは似ているようで違う。

ミャンマーのホームセンターには、水道タンクとか便器とかバスタブとか、巨大な資材が豊富に選べるのだけど、ドライバやドリルビットみたいな繊細な工具類が非常に貧弱なのだ。そのへんが、ミャンマーの建築・家具業界の全体のクオリティに影響している気がしてならない。

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その後、モーラミャインの市街地のお店も探したが、結局探していたものはひとつも発見できなかった。

やっぱり日本と生活習慣、気候が違うから無いものは無いよね。たとえば、ミャンマーで電気ストーブとか加湿器とかを探そうと思ったらかなり大変だと思う。必要ないからね。

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しかたなくパアンへ向けて戻ることに。

途中でカァヨン山に差し掛かったとき、道ばたに仏旗がはためいているのに気付いた。

あれ?この道はまだ入ったことがないな。

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カァヨン山は東側を中心にこれまで4つの鍾乳洞を発見している。でも西側は航空写真からも、街道からの目視でも採石場のようなものしかなさそうなので、確認を怠っていたのだ。

前回の滞在で「独立丘陵の周りに道があったら巻くべし」という教訓を得たので、ここはひとつ巻いておくか!

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道を入ると、採石場の労働者の家かとおもわれる住宅が何軒かあり、それをすぎると未舗装の道が山際に続いている。

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山肌はけっこうダイナミックな景観。

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山のほうへ続いている道を発見!

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仏旗も立てられているので、行ってみる価値はありそう。

10mほどの斜面を登って行くと、、、

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道は下りになって窪地へ続いていた。

ドリーネだなここは。

石灰岩質の山の地下が浸食で空洞になり陥没した穴である。

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ドリーネの中へ下りていく。

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ドリーの底には浅く水が溜まってた。

たぶん通年溜まっているドリーネ湖ではなく、雨季で水はけが追いついていないのだろう。

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小さな庵のようなものが見えるが、そこまで行くには水の中を歩かなければならない。

サンダル履きなので、ズボンをめくって庵を目指す。

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途中、水没した洞窟みたいなものもあったが、奥は深くなさそう。深かったとしても水浸しで入れない。

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ドリーネ全体が水没していて、小さな庵ほのかにパゴダや仏像などは見当たらなかった。

これから寺にしていこうという場所なのかもしれない。

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庵に到着。

電気も水道もない、雨水を集めての暮らし。

ミャンマーのお坊さんってホントにストイックだよ。

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物音を聞きつけてお坊さんが出てきたのでご挨拶して、写真を撮らせてもらった。

お寺の名前は訊き忘れた。そもそもここは寺なのかどうかもわからないけれど。

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帰りはまた水溜まりの中を歩かなくちゃならない。

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オートバイをとめた場所まで戻ってくると、また黒雲が近づいてきた。

雨になる前に、この山の西側のチェックを終わらせなくては。

(2019年07月09日訪問)