ん!? 湿田か!?
道路を走っていたら、稲刈りシーズンというのにやけにしけっぽい田んぼが目に付いたので車を止めてみた。
「湿田」とは、水が必要ない時季にも土が乾かない田んぼのことだ。
趣味や遊びではなく、生業としての稲作が行われている田んぼは現代ではほぼ乾田になっている。「乾田」とは水が必要ない時季に排水できる構造の田んぼのことである。
湿田が残っている場所というと、里山の谷津や山村の千枚田みたいな場所をイメージするかもしれないが、経験的にはどちらかというと海岸線に近い海抜の低いところに多いように感じる。
海抜が低い土地では河川の水位が高く、土地の傾斜も利用できないので田から水を抜くのが難しいからだ。一方の棚田はそもそも傾斜があるから、水を抜くより溜めるほうが大変なくらいだろう。
この田んぼでは中央を横切るように明渠が掘られていて、何とか排水しようとしているが土はまだぐちゃぐちゃだ。
最近雨でも降って余計に状態が悪いのかもしれないが、地表に浮き草が点々と落ちているのでこの数日だけ水が来たというのではないのだろう。
バインダーで刈り取った稲をはさ掛けして乾燥させるやりかた。足もとが悪いのでただ歩き回るだけでも疲れそう。
これがこの田んぼの排水路。圃場から水面までほとんど落差がない。このような環境ではメダカが生息できる。
メダカは一年中田んぼにいるわけではなく、産卵時に川から田んぼに入り、外敵が少なく高い水温の中で産卵し、成長すると田んぼから川に戻る生態をもつ。そのため、川と田んぼを行き来できなければ世代交代できないのだ。
決して、昔は無農薬だったからとか水質がよかったからメダカが棲めたというのではない。
水路を見ると、メダカがいた。
野生の在来種のメダカだ。
こうした田んぼは、全国的にはかなり少なくなっているのではないだろうか。
(2008年10月11日訪問)