田宮街道と呼ばれる郊外店が点々とあるショッピングゾーンから少し路地を入ったところに、城っぽいような、城っぽくないような、微妙な建築物がある。
看板には「研修道場東内会館」とある。
どうやら、剣道や合気道などの道場らしい。
手前の部分に薄い3階の建物があり、その後ろが道場になっているようだ。木造3階ってそれだけでロマンだよね。
手前部分は、脱衣室や防具などの置き場ではないかと思われる。
城っぽいかどうかに関わらず面白い建物だと思う。
さて、このくらいの物件だと、はたして「城を模した建築」と言っていいのかどうか悩むところ。そこでまず、城を模すとはどういうことかというポイントを整理したい。
まず戦闘や防御に直結する意匠である、矢狭間、鉄砲狭間、石落し。これらは民家には不要な要素なので、この何れかがあれば、城を意識した建物と考えていいと思う。あとは天守台の石垣。
この建物には一応あるけれど、かなり苦しい。
次に、平面が正方形の部屋に対して、入母屋の屋根を載せるということ。
仏堂以外でこの要素を持つ場合、特に2階以上にあると非常に城っぽくなる要素だと思っている。
次に、千鳥破風を高く揚げるということ。
そもそも千鳥破風というのは雨じまいが悪い、採光が妨げられるというデメリットしかなく、一般民家ではあまり造られない要素だ。元を辿れば入母屋の大棟に櫓を載せたことでいわゆる天守閣という形ができ上がっていくわけだが、そのめり込みが形骸化したのが千鳥破風だ。この建物の2階部分のように、軒まで届くような千鳥破風は城的な要素といえる。
最後のポイントとして、大棟にシャチホコを揚げていること。これはかなり重要なポイント。
普通、揚げないよね?
総合的に見て、この道場は城を模した建築と言っていいのではないかと思う。
(2002年07月17日訪問)