8月の小雨降る日曜日。どこかへ出かける気分の天候でもない。このまま何もせずに週末が終わってしまいそうだったので、昼過ぎから高松の仏生山温泉へ出かけた。
「仏生山」という街は、高松城主の菩提寺、仏生山来迎院法然寺の門前町で、寺の参道800mほど町並みが続いている。でも、金比羅さんのように土産物屋に観光客が引きも切らないという様子ではなく、その参道を歩く人などまったく見られない。
この参道を通るとき、以前から気になっていた建物がある。
それは、写真右側の格子戸のある商家の裏手にある巨大な土蔵だ。
個人の敷地になるので、表通りから見える範囲で撮影するが、2階の屋根ほどの棟高の巨大な土蔵なのである。
ここを通るたびに「芝居小屋の跡では !?」と思ってしまうのだ。
ただ店の裏手になるので、たぶん造り酒屋か何か、醸造業などを営んでいた蔵なのではないかと結論した。
映画館の跡のデータベースとして『消えた映画館の記録』というすばらしいサイトが存在していて、それによれば仏生山にあった映画館は「香川座」で、場所はこの場所ではないようだ。ただし『消えた映画館の記録』は主に映画を上映していた劇場のデータベースであって、芝居小屋として始まり芝居小屋として閉館したものは含まれていない。
それを思えば、この土蔵が劇場の跡という可能性も0.1%くらいはあるかもしれない。これまで徳島の映画館跡を訪ねたとき、造り酒屋が映画館を経営したという話を何箇所かで聞いているからだ。
ところで、私は坂野劇場が失われたことをきっかけに徳島県内の映画館跡を調べるようになったのだが、いくつか跡地を訪ねているうちに、実は私が見たかったのは古い映画館ではなく芝居小屋だったのだということに気付いた。
映画館跡でいえば、徳島市内には閉館ほやほやの映画館の建物がまだいくつかあるが、それらの写真を撮ってまわりたいという意欲もあまり湧いてこなかったのだ。
ここまで、芝居小屋と起源とした映画館跡を探して県内の町を訪ねてきたが、もうこれ以上は新たな遺構が見つかる可能性はないような気がしている。もちろん「絶対ない」とは言い切らないが、とりあえず徳島県内の映画館/芝居小屋探しはこれでいったん終わりということにしたい。
(2011年08月21日訪問)