裃雛めぐりは人間総合科学大学でおしまい。あとは帰路につくだけとなった。人間総合科学大学は岩槻市街から日光御成街道(県道65号線)を進んだ場所にあったので、そのまま街道を北上することにした。
このルートは自宅に最短距離で帰る方向とはいえない。きょうはがんばったので、久しぶりに「かつ太郎本店」で夕食にしようかと考えているのだ。かつ太郎本店は茨城を中心として、埼玉と群馬の東端にわずかに店舗があるとんかつチェーン店で、私はファンなのだ。でも夕食にはまだ早いから寄り道していくことにした。
訪れたのは宮代町のコミュニティセンター「進修館」。建築好きの人には有名な
宮代町にはほかにも象設計集団による「笠原小学校」があり、個人的はそちらのほうが見ものだと思っているが、なにせ現役の公立小学校なので見学には申し込みが必要なうえ、いまCOVID-19の関係で受け入れはしていない。小学校のほうは外観だけを見て、進修館に向かった。
笠原小と進修館は大学生のころに一度見学に来たことがあり、うん十年ぶりになる。もう一度、笠原小はちゃんと見学したいなと思っているので、進修館だけ訪れるのはやや不本意でもあった。
でも妻は初めてなのでまあいいかと思い、進修館だけを見ていくことにした。いつか、いつか、と思っていても実際は機会はないのかもしれないから。
なので、ここの写真はすべて妻が撮っていて、私はただブラブラしているだけ・・・。
私が以前訪れたときはまだこの建物が出来て数年という状態だったが、たいぶ時がたって、ずいぶん古びているのにびっくりした。
この建物はジャンルとしてはポストモダン。
象設計集団の特徴は、モダニズムにみられる鉄とガラスの造形を最小限にして、コンクリートの凹凸の意匠を細かく使った有機的な感じの建物を造ることではないかと思っている。
たとえば、この廊下を見ると、ベンチが置かれているけれど、柱の下のところのサイコロみたいなでっぱりに座ってもいい。こういう設計がいちいち楽しいのだ。
ベンチや家具も一貫したデザインで設計されている。
進修館は象設計集団の初期の作品で、その特徴を非常に色濃く感じることができる。
進修館のデザインや素材の使い方は、建築家パオロ・ソレリが提唱したコンセプト「アーコロジー」を彷彿とさせる。2023年の現在となっては、パストフューチュラマと言ってもいい世界観だ。
学生時代、こういう建築に本当にあこがれていたな・・・。
建物は円弧状にレイアウトされていて2階建て。
中庭は芝生の斜面になっていて、斜面を登るとそのまま2階の回廊のレベルになっている。
1階は逆に斜面を降りていく地下のような感じになっている。
いまは冬で芝生が枯れているから、進修館を訪れるなら夏だな。
2階の回廊の内部。
小さなデザインタイルがまばらに嵌めてある。こういうところも象設計集団らしい。歩き回るだけで、「あ、こんな隙間に人が入れる空間が!」というような小さな発見がたくさんある。
いつか笠原小とセットで、もっと丁寧に紹介したいと思うが、その機会は来るのだろうか。
(2023年02月26日訪問)