綾の照葉大吊橋

歩行者用観光吊橋のはしりともいえる大きなつり橋。

(宮崎県綾町南俣大口)

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きょうの宿泊地椎葉村へ向かおうとしたが、本来計画していた県道360号線がどうも通行止めになっているようで、ちょっと遠回りすることになった。

もっとも、遠回りルートにある大つり橋は元々行ってみようと思っていた場所なので、あながち効率悪い動きとも言い切れない。

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「綾の照葉(てるは)大吊橋」は全長250mある長大な歩行者用のつり橋だ。できたのは昭和59年(1984)で、平成18年(2006)年に大分県の九重夢大吊橋(390m)ができるまで、20年間日本一の長さだった。

日本一ではなくなったとはいえ、谷が深く周囲の森が美しいので十分に感動できる。

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そもそもこの橋は対岸に人家があるわけではなく、森林の散策のためだけに造られた橋だ。林業の人が渡る橋ですらなく、純粋に観光のためにある。

というのも、この谷一帯は人跡を阻むような急傾斜で、照葉樹を中心とした原生林が残っていた。森は国有林だったのだが昭和40年代に伐採計画が持ち上がり、住民たちの働きかけで開発を中止したことを記念して、森を近くで見学できるルートとしてこの橋が架けられたのだ。

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最初の架橋は昭和57年だったが、老朽化のため平成22年(2010)に架け直されている。

総工費は3.2億だったという。吊橋って意外に安いな。

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ただし、歩行者専用なので、橋床の幅は1.2mしかなく、人すれ違うのがやっと。

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橋の中央部分はグレーチングになっていて下が見える。

特に怖い感じはしなかった。

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この橋はスリルを楽しむタイプではなく、橋の上か広大な照葉樹林の展望を楽しむべきなのだ。

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橋が高い位置に架かっているため、まるで空中から森を見下ろしているような風景。

照葉樹林は四国の南半分にもあり、特に海岸に近い植林が困難な場所に残っているが、これほど一望できる場所はないかもしれない。

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この森を伐採する計画があったというが、どこまでその気があったのだろう。ダムでも造る計画だったのか。

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橋の対岸には遊歩道があり、もうひとつのつり橋を渡って1時間で一回りできるようだ。

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きょうは宿へ急がなければならないので、一番近くの山の神コースを歩くことにした。

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橋の北詰めにも小さな祠がある。

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途中は暗い森。

照葉樹林って、北関東で育った者にとっては実はちょっと重苦しく感じる。

特に常緑樹の極相林のような場所は、いってみれば勝負が付いてしまった植生だから、必ずしも生き生きした生命感を感じさせる場所ではないのだ。

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でも所々にこうして倒木の天然更新があれば、森の中にもいっとき日が差す。

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案内板には片道15分と書かれていたが、5分程度で山の神と思われる祠に到着。

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周囲にはなぜかケルンが作られていた。

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祭神は「照葉大明神」。

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続いて、橋の南詰めにある照葉樹林文化館という資料館へ。

樹のサンプルが並んでいた。

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こうした見本はときどき見かけるけれど、これまで見た中では一番樹種が充実していた。

まとめて見ても頭に入らないから、1回に1~2種類でも覚えていけばいいだろう。

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動物を捕る罠の展示があった。

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さまざまな罠があるが、もう使いこなせる人も少ないのではないかな。

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いくつかは現在は使用できないものもありそう。

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イノシシを捕る大型の罠。

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こちらは農具。

田下駄の間にある「木鍬」が興味深い。

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わらすぐりとは、ワラ細工をするときに不用な葉の部分をこそぐことだが、こんな竹の道具でできるのか。初めて見た気がする。

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木でできたひき臼。

籾摺りに使うもの。

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この角度のほうがわかりやすいか。

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地機(じばた)

古い形式の機織り機だ。

奥側に人が腰かけ、タテ糸を腰で引っ張ってテンションを維持するもの。

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人が腰掛ける側が狭くなっていたり、腰掛け板がないのは部品が足らないのか、あるいは、そういう機なのか・・・。

(2012年03月21日訪問)