きょうの宿泊地椎葉村へ向かおうとしたが、本来計画していた県道360号線がどうも通行止めになっているようで、ちょっと遠回りすることになった。
もっとも、遠回りルートにある大つり橋は元々行ってみようと思っていた場所なので、あながち効率悪い動きとも言い切れない。
「綾の
日本一ではなくなったとはいえ、谷が深く周囲の森が美しいので十分に感動できる。
そもそもこの橋は対岸に人家があるわけではなく、森林の散策のためだけに造られた橋だ。林業の人が渡る橋ですらなく、純粋に観光のためにある。
というのも、この谷一帯は人跡を阻むような急傾斜で、照葉樹を中心とした原生林が残っていた。森は国有林だったのだが昭和40年代に伐採計画が持ち上がり、住民たちの働きかけで開発を中止したことを記念して、森を近くで見学できるルートとしてこの橋が架けられたのだ。
最初の架橋は昭和57年だったが、老朽化のため平成22年(2010)に架け直されている。
総工費は3.2億だったという。吊橋って意外に安いな。
ただし、歩行者専用なので、橋床の幅は1.2mしかなく、人すれ違うのがやっと。
橋の中央部分はグレーチングになっていて下が見える。
特に怖い感じはしなかった。
この橋はスリルを楽しむタイプではなく、橋の上か広大な照葉樹林の展望を楽しむべきなのだ。
橋が高い位置に架かっているため、まるで空中から森を見下ろしているような風景。
照葉樹林は四国の南半分にもあり、特に海岸に近い植林が困難な場所に残っているが、これほど一望できる場所はないかもしれない。
この森を伐採する計画があったというが、どこまでその気があったのだろう。ダムでも造る計画だったのか。
橋の対岸には遊歩道があり、もうひとつのつり橋を渡って1時間で一回りできるようだ。
きょうは宿へ急がなければならないので、一番近くの山の神コースを歩くことにした。
橋の北詰めにも小さな祠がある。
途中は暗い森。
照葉樹林って、北関東で育った者にとっては実はちょっと重苦しく感じる。
特に常緑樹の極相林のような場所は、いってみれば勝負が付いてしまった植生だから、必ずしも生き生きした生命感を感じさせる場所ではないのだ。
でも所々にこうして倒木の天然更新があれば、森の中にもいっとき日が差す。
案内板には片道15分と書かれていたが、5分程度で山の神と思われる祠に到着。
周囲にはなぜかケルンが作られていた。
祭神は「照葉大明神」。
続いて、橋の南詰めにある照葉樹林文化館という資料館へ。
樹のサンプルが並んでいた。
こうした見本はときどき見かけるけれど、これまで見た中では一番樹種が充実していた。
まとめて見ても頭に入らないから、1回に1~2種類でも覚えていけばいいだろう。
動物を捕る罠の展示があった。
さまざまな罠があるが、もう使いこなせる人も少ないのではないかな。
いくつかは現在は使用できないものもありそう。
イノシシを捕る大型の罠。
こちらは農具。
田下駄の間にある「木鍬」が興味深い。
わらすぐりとは、ワラ細工をするときに不用な葉の部分をこそぐことだが、こんな竹の道具でできるのか。初めて見た気がする。
木でできたひき臼。
籾摺りに使うもの。
この角度のほうがわかりやすいか。
古い形式の機織り機だ。
奥側に人が腰かけ、タテ糸を腰で引っ張ってテンションを維持するもの。
人が腰掛ける側が狭くなっていたり、腰掛け板がないのは部品が足らないのか、あるいは、そういう機なのか・・・。
(2012年03月21日訪問)