綾町の町内に城跡があり、工芸体験ができる場所になっていると聞き、行ってみることにした。
城跡は舌状台地の突端のような場所にある。山城に分類されるらしいが、台地側から見るとほぼ平城のような立地だ。
場内には手作り工芸体験館という建物がある。
歴史的な建造物ではなく、御殿ふうに造られた現代の建物だ。綾城は戦国時代に築城されたが、江戸初期の一国一城令により破却されたので当時の建造物はまったく残っていない。
体験館の中を覗いてみた。
体験できるのは陶芸と機織りの2種類。
機織りは
見たところ、高機の構造は特に地方の特色があるものではなく、標準(?)的なもの。全部で9台ある。
染糸が
ボビンに巻き直した染め糸。
綛のままでは扱いにくいので、
管に巻かれた糸もあらかじめ用意されているので、体験時には好きな色で織れるようになっている。
これはヨコ糸で、
整経台。タテ糸を一定の長さに引き揃えるための道具だ。整経にはいくつかの手法があるが、これは手延べ整経という手法のための形式。狭い場所で整経できるのが特徴。
全体が金属製で、糸を掛ける棒には塩ビパイプがかぶせてあって錆が移らないようにしてある。木造のほうが風情があるけれど、造りが華奢だと棒やフレームがガタついて精度が下がるので、こうした金属製のほうが信頼性は高いだろう。
一方の陶芸コーナー。
販売もしていて、ちょうどよい茶わんがあったので、お土産に4客買った。
こちらもろくろが4台あり、本格的な体験ができる。
窯は別の建物にあり、ちょうど窯入れしているところだった。
続いて、天守閣のほうへ行ってみる。
天守閣は崖線の突端部分にあって、空堀で台地部分から分けられ、木橋で渡れるようになっている。
この場所に城ができたのは鎌倉時代の末、一国一城令で破却されるのは江戸初期だから、基本的には戦国時代の城である。
戦国時代初期の城はこんな感じで、館の屋根に望楼を載せたような形だった。それがだんだんと望楼部分が高層化し、千鳥破風だらけのいわゆる天守閣と進化していく。
この場所に何らかの建造物があったことは発掘などで判明しているが、どのような形の建物だったかは絵図などが残っていないためはっきりとはしない。なので、戦国時代初期を想定してすべて空想で再建した。このように実際の城跡に史料に基づかずに再建した城を模擬天守という。この模擬天守に関して言えば、あまり前のめりになっているところもなく堅実なところではないか。望楼にバルコニーがあったかどうかはわからないけれど、わざわざ真っ暗でのぞき窓から外を見るような再建をしてもしょうがないからこれでいいのだろう。
内部へ入ってみる。
再建は木造だが、製材や木組みなどは当時の手法通りというわけではない。
たぶん耐震基準的にも現代の基準に適合しているのだろう。
天守は3重3階とでも言えばいいのかな。小屋組みの中に2階があり、3階の望楼に登ることができる。
望楼からは360度の展望がある。
こちらは東側の綾町の中心街方面。
南側の野球場やサッカー場がある方面。
芝生が貼られている山は、公園にある展望台と思われる。
西側の空堀方向。
(2012年03月21日訪問)