2021年のNHK大河ドラマ『晴天を衝け』製作に妻が演技指導で関係することになり、年末から何度か東京や横浜の撮影スタジオに来ている。小道具の搬入やサポートのため私も同行しているのだ。
撮影セットの確認とリハーサルで午後一杯かかり、担当したシーンの本番の撮影は明日の午後。
今回の撮影は数分のシーンだけど2日がかりで、私たちもNHKが用意した渋谷駅付近の宿に宿泊することになった。
夕方には1日目の仕事がおわり、渋谷で外食することにした。
大学時代に設計事務所のアルバイトで通ったり、就職してからは長いあいだ渋谷は乗換駅だった。短い期間だっが勤め先が渋谷駅前にあった時代もあり、東京の繁華街のなかではいちばん馴染みのある街だ。
ひさしぶりに訪れた渋谷は、依然と変わらないところもあるが、ビルの背が高くなっていた。
センター街、スペイン坂あたりをぶらついて夕食。
完全にオノボリさんですな。
食後にお茶でもしようということで、百軒町まで足を伸ばした。
ちなみに、百軒町のあたりは元赤線の丸山町、ラブホテル街の入口といった感じの場所で、ライトにお茶をするというのに最適な場所ではないよ?
百軒町の入口にある道頓堀劇場は、東京にいくつかあるストリップ劇場のひとつ。
そこからさらに奥へ入っていくと、ラブホテルに囲まれた迷路のような横丁がある。
お目当ての喫茶店は、この電柱の看板にもある「ライオン」。
宇多田ヒカルが「日本でオススメの店は?」と聞かれて名前を挙げたといわれる隠れた名店なのだ。
東京に住んでいたころ、都内の名曲喫茶巡りをしていた。その中でもライオンは屈指の名店、いや、都内の現存する名曲喫茶の最高峰なのかもしれない。
ちなみに名曲喫茶というのは「店内で名曲をかける喫茶店」という認識では半分しか合っていない。どちらかというと機能面では「クラシックを聴くためのワンドリンク付きのホール」とでも理解したほうがいいと思う。かつてオーディオセットが高嶺の花だったころ、貧乏学生や文筆家がクラシックを聴くために通ったという。
どの名曲喫茶でも店内は私語厳禁、そのかわりワンドリンクでいくら粘っても大丈夫という、慣れればとてもリラックスできる空間なのだ。
そしてもうひとつ。名曲喫茶には建築構造的な特徴がある。それは音楽が全座席に届くように、内部が吹き抜けになっていること。古い喫茶店で中二階があって吹き抜けになっているお店は大体がもと名曲喫茶なのである。
その特殊構造の名曲喫茶の中でも、ライオンは特に意匠に優れている。文化財に指定したほうがいいのではと思うくらいだ。
ライオンは全体が3階建てで、現在使われているのは1~2階のみ。
2階へ上がる階段はちょっと狭くて、行ってもいいのかな?という雰囲気だけど私たちは2階へ。芝居小屋へ入ると2階桟敷が気になってしまうような人は、2階のスピーカー前がオススメ。
残念ながら店内は写真撮影禁止なので、どんなにすばらしい店なのかは行って自分の目で確かめるしかない。
ライオンはお店のシステム自体は普通の喫茶店と変わるところはなく、別にクラシックに興味がないイチゲンさんでも気まずいことはない。メニューの値段も普通。
会話はできなから、カップルで入るより一人で行って好きなだけいるというのが向いている店だ。
この日は、妻はホットココア、私はミルクセーキを注文。いまどきミルクセーキがあるってだけでもめずらしい。
お店のしおり。
月間の演奏スケジュールが書かれている。
この横丁の奥、ラブホテルに挟まれるようにある千代田稲荷神社。
夜でも参拝できる。
(2021年02月25日訪問)