小畔川の背割堤

■小畔川■ 3本の川が一気に合流する地点の堤防。

(埼玉県川越市平塚)

埼玉県立 川の博物館にあった荒川水系の全体パネル。このパネルにはたくさんの川が書き込まれているが、発光している主要な水系は「荒川」「和田吉野川」「市野川」「入間川」「新河岸川」の5つで、これを埼玉西部の主要な河川としている。

これまでに入間川地域を見てきたが、ここからは入間川の支流について見ていく。

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地図でサーモンピンクで示したのが入間川の支流だ。埼玉県西部の平野~丘陵部にはおびただしい支流があるが、入間川から直接分岐する大きな支流は「安藤川」「越辺川」くらいしかない。県西で存在感がある「槻川」「都幾川」「高麗川」は、入間川の直接の支流ではなく、越辺川の支流という扱いになる。

これから見ていく「小畔(こあぜ)川」も合流地点を精密に見たら越辺川の支流ということになる。

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入間川から見た越辺川との合流地点。

左側が入間川、右側が越辺川になる。

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この場所には長い背割堤が築かれている。

背割堤とは大きな川が合流する場所で、急角度で合流させようとすると水がさばけずに氾濫しやすいため、合流点を下流側にずらしてスムーズに合流させるための堤防だ。

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しばらくその背割堤をたどっていくと、途中からまた新たな背割堤が現われる。

越辺川に小畔川が合流するための背割堤だ。

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この場所では、入間川、小畔川、越辺川の3つの河川が一度に合流するため、背割堤も2つ並行に造られている。

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ここはもともと水害を受けやすく、写真奥に拡がる合流の股の低地(点線部分)は冠水リスクがあまりにも高く、居住には向かない遊水地のような場所だ。実際、2019年の台風19号では堤防が決壊して奥に見える水田がほぼほぼ冠水している。

この合流地にの内側にある建物はヘリポートと特別養護老人ホームなのだが、台風19号では床上浸水し逃げ遅れた利用者が消防隊に救助される映像がニュースで流れたのを覚えている人も多いのではないだろうか。

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このあたりが堤防が切れた場所だ。現代の工事では破堤した場所の痕跡はほとんどわからない。2023年には復旧はほとんど終わっているが、越辺川の高水敷の野球グランドのまわりにまだ工事が続いていた。

こうして見ると、反対側に破堤しなくてよかったな。人口密集地に側を守るため、手前側の堤防が少し低く設計されているのか。

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復旧した堤内は資材置き場になっていて、立入禁止になっている。

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破堤した場所のすぐ横には排水機場があり、堤内が冠水しないようになっていたはずだが、排水先の越辺川側が計画水位を超えてしまっては排水のしようがなかった。

(2025年08月25日訪問)