日龍峰寺の参道の山道の途中に、気になる風景があったので、帰りがけに寄ってみた。
それが左の場所である。
カーブの突き当たりに火の見櫓があるというだけで少しは絵になる風景だし、村外れの三本辻という民俗学からみても霊的な場所と言える。
でも立ち寄った理由は、ただなんとなく、というだけであった。
火の見の下にはコンクリートの貯水槽のようなものがあった。一見するとどこにでもある防火用水のようだが、よく見ると側面から複雑に水が流れ出ている。
これ、フツーの防火用水じゃない! と直感し、写真を撮りまくっていると、道の向かいの家からおじいさんが出てきて、私の方に歩み寄ってきた。
「これって何ですか?」恐る恐る尋ねてみる。
「これはねぇ発電所の跡だよ。」
「写真を撮ってたから、きっと知りたいだろうと思ってね。」
なんて、親切なおじいさんなんだ。
おそらくこの発電所がまだ使われていたころは、その横に住んでいたおじいさんにとって誇らしい存在だったのだろう。懐かしそうに話してくれた。
現在公民館が建っている部分に昔発電所の建物があって、写真の部分からタービンに水を送っていたそうである。今はコンクリートの部分が切り取られたように終わっており、その上の水門が開けられることはない。
三本辻、火の見櫓、水門、発電所跡‥‥、私の好きなものをてんこ盛りにした場所であった。自動車を運転していて、こういう物件に気がつくというのは自分でも不思議だ。発電所跡があるとわかっていて立ち寄ったわけではないのだから、偶然の出会いとしか言いようがないのである。
(2000年04月30日訪問)