川原湯温泉と長野原駅のちょうど中間あたりに横壁という集落がある。その集落を東西に抜ける古い街道筋に滝無不動という石仏があるというので見学する。
道路が一部分極端に狭くなっている場所がある。そこが滝無不動の境内(?)である。ここ以外では街道は自動車が楽にすれ違える幅だが、不動尊のある場所だけは路幅を拡張できなかったのであろう。
不動尊は小さな小屋に収まっており、その左右には石造の金剛力士像が立っている。
そもそも石造の仁王というだけでも珍しい物件なのだが、それにもましてその造形がユニークだ。
安定感があるというか、すごい短足のスタイル。
本尊は、仁王よりもさらに胴長短足の不動明王。高さは60cmくらいか。目鼻の造形もマンガチックで、かなり気に入った。(長野県に修那羅山という神社があってユーモラスな石仏が多く見られるが、そこの石仏の作風と似ている。)
群馬県にこんなユニークな石仏があったとは知らなかった。群馬県内でもあまり知られていない石仏だと思う。
敷地には「むほうとうさん」という神様も祀られている。少女がなでている墓石だ。「むほうとうさん」とは「無縫塔」であろう。つまり、僧侶の墓である。
その昔、とてもお茶が好きなお坊さんがいて、そのお坊さんが臨終の時に「自分が死んだら子供たちが病気にならないようにを守ってやろう。その代わり自分はお茶が好きだから、墓石にお茶をかけてくれ。」と言い残して死んだ。それ以来、村では子供が病気になると、むほうとうさんにお茶を掛けて快復を祈願するのだという。
(2001年04月01日訪問)