矢掛町の市街地に戻る。矢掛町は山陽道の宿場町で、現在もその当時の面影がそこかしこに残る古い町である。
町内のやかげ郷土美術館の駐車場に車を停めてしばし町をぶらぶらしてみることにした。
街道筋はナマコ壁の蔵造の商家が多い。
ナマコ壁というのは、漆喰をかまぼこのように盛り上げる土蔵の壁の装飾手法だ。その盛り上がりが生き物のナマコのようなのでその名前がついた。黒く見える部分は防水目的の瓦板で、盛り上げた漆喰は本来は瓦板の目地の役割があったのだろう。
写真のように垂直、水平にすることもあるし、45度の角度で斜めに交差させる模様を描くこともある。
町には土蔵の路地がいくつかある。
路地の奥に寺が見える。(専教寺という寺か?)街道筋から少し離れていたので立ち寄らずに町並みに戻る。あとで車で移動しようかという考えも一瞬浮かんだが、結局訪れることはなかった。訪れる寺、訪れない寺、その境をわけるのはほんの気まぐれなのだ。こうして訪れなかった寺にいつかもう一度行くことがあるだろうか‥‥。
町並みの東側まで歩いてきた。
右側に見える大きな屋敷は矢掛宿脇本陣。
脇本陣というのは、大名に同行した家老などが宿泊した施設だ。
妻入りの土蔵造の家もある。こうした2階が住居スペースになっている民家は比較的新しい(少なくとも明治以降の)建築ではないかと思う。
町並みは重伝建のようなわざとらしさはなく、その気になれば車で中を通過するだけでもおおよその雰囲気は掴めるだろう。普通に生活可能な空間にかつての街道の名残がぽつぽつと残っている町並みなのである。
表通りから一本裏道に入ったところ。郷土美術館の櫓が見える。
この櫓が復元なのか、それとも、単に昔風にデザインされた展望台なのかはわからい。
上に登れるらしい。
(2001年05月04日訪問)