猿谷橋の水車

天狗岩用水にある機械的な水車。発電所か?

(群馬県前橋市総社町総社)

帰省3日目。朝から総社町へ向かう。総社町は前橋の市街地からは利根川を挟んだ西岸にある地域だ。今は前橋市に合併されているが、古墳時代には国府が置かれ、江戸初期には総社藩も置かれた歴史の古い町だ。そして私が幼少時代を過ごした町でもある。

さて、ここで話は昨日の夜にさかのぼる。弟と私は前橋市の郊外で夕食をとり、その帰り道に総社町を通った。そのときたまたま天狗岩用水という総社町を南北に走る用水路の話をしていて「じゃあ用水を見て帰ろう」ということになった。雨も降っているなか、どうして用水を見ようと思ったのか、そしてどうして猿谷橋という小さな橋へ行ったのか、すべては偶然の出来事でしかない。だが、私たちはその猿谷橋でなんと水車小屋を見つけたのである。

もはや神懸かり的としか表現できない体験である。積極的に水車小屋を探しているわけではないのに、水車小屋の方から見つけてくださいとやってくる、そんな感覚だ。そもそも前橋市内に水車が残っていたということ自体、驚くべきことなのだから。

日が変わってさっそくその水車小屋を詳しく見るために総社町へと向かった。昨日の悪天がうそのようにからっと晴れて暑いくらいの陽気だ。

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目的の猿谷橋のある道は、自動車がかろうじて通れるくらいの狭い道路だ。総社町を東西に抜ける道なのだが、以前から私はこの道はとても古い道ではないかという印象を持っていた。

そういう古い道は地図を見たり自動車で走ったくらいではなかなか見えてこない。自転車や徒歩で町を何度も通るうちに自然に見えてくる。ここはそういうタイプの古道だ。

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そういう道を私は冗談で「この道は戦国時代にはすでにあったね」などと言うし、私の友人は「旅人の理念が流れてる道」などと形容したりもする。

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しかしこの道に関して言えば、その表現もあながち間違いではないだろう。道が天狗岩用水をまたぐ場所には猿谷橋という小さな橋があり、そこには総社藩主が城下町を整備したときに猿谷六右門という庄屋が架橋したという案内板があった。

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したがってこの道は江戸時代初期にはすでに存在していたことになる。

ガードレールがあるところが猿谷橋である。いや、猿谷橋の跡というべきか。

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久しぶりに訪れた天狗岩用水は暗渠になってしまっていて、もう水面をみることはできなかった。

砂利道の部分が天狗岩用水が流れていた場所だ。

肝心の水車小屋は中央の樹に隠れた建物だ。道路からは水車を確認することはできない。

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砂利道を少し進むと水輪が見えてくる。

川が暗渠になったために発見できたといってもいい。複雑な心境だ‥‥。

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近くまで寄ってみる。

水輪はとても機械的な感じのもので、用途は発電だったのではないかと思う。

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水輪の手前には鉄製の歯車がついている。おそらくここにもう一棟の建物があって機械を動かしていたのだろう。だとずれば、道からはほとんどその姿が見えなかったはずである。いままで知られていなかったのも無理はない。

軸の奥側は、後ろの青いトタンを貫いて小屋の中にまで届いている。奥の建物の中でも水車を利用する装置があるのかもしれない。

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導水路はコンクリート製で、下掛けになっている。地形が改変されているため水路はたどることが出来ず、どこから取水していたかは確認できなかったが、おそらく水面の低い天狗岩用水から取水しているのではなく、この少し上流で天狗岩用水に注ぎ込む五千石用水という用水の水を引いていたのではないかと思われる。

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建物は地図によれば「アカギ電化」という会社の所有になってる。家の中には作業着が干してあったりして、生活の雰囲気がある。

これは水車小屋を南側から見たところ。

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小屋の東側の路地。

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小屋を北東の方角から見たところ。

この場所の全景

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天狗岩用水というのは、総社藩主秋元氏が新田開発のために作った用水で、3キロほど上流の利根川から取水している。上流部での難工事に天狗が力を貸したといわれ、その名前が付いた。

JR上越線の鉄橋。このあたりはかつて深い掘割になっていたところで、昼なお暗い水面は見ていると怖いほどであった。今は暗渠になりその当時の面影はない。

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暗渠に沿って歩いてみることにした。

しばらく行くと崖に穿たれた防空壕の跡で子供が探検ごっこをしていた。子供にとっては親にも秘密の大冒険のはずで、こんな遊びで培われる想像力はなにものにも代えがたいものだろう。子供時代に一度はやっておくべき遊びだ。

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しばらく歩くと、桑の垣根のある畑に出た。

この道を少し歩くと、愛宕山古墳や二子山古墳という古墳に行けるのだが、この後の予定もあったので途中で引き返した。

この2つの古墳については、いつか紹介するときが来るかもしれない。

(2002年05月05日訪問)

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