常楽院閻魔堂

迫力ある閻魔大王も、眷族のコンクリ像に喰われている。

(愛知県西尾市刈宿町出口)

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常福寺大仏のすぐ近くの国道247号線。左写真の左側の竹林のなかに、かなり怪しい辻堂がある。

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これがそれ。常楽院閻魔堂である。

道を普通に走っていて目に留まる物件なのかどうかはわからない。(私は寺ばかり探しているので、普通に目に入った。)

地蔵格子と左右の石像がなければただの物置にしか見えない。境内(?)は道路に面した数坪しかなく、およそ寺があるような立地ではない。

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珍寺大道場の小嶋さんにいただいた同人誌『近代史を飾る コンクリート製彫刻・建造物職人 後藤鍬五郎』によれば、この閻魔堂は後藤鍬五郎という彫刻職人と沢常吉という人の共同製作ということだ。

門前の鬼はかなりユニークで、まるで遊園地のウサギの着ぐるみのような感じ。

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後藤鍬五郎という人は、常福寺大仏聚楽園大仏などを作った職人で、作風は精緻で写実的。この鬼はどう考えても鍬五郎の製作とは思えない。となると、もう一人の作者沢常吉の製作ということなのだろうか。

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右の鬼は片方の角が取れているのだが、残っているほうの角は垂れ下がっているようになっている。何がどうしたら鬼の角が垂れ下がる表現になるのだろう。

手に持っているフォークのような棒も、手の握りこぶしも、すごく変だ。芸術だから何でもアリというのは認めたくないなあ。

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「何も参考にせず、人の意見も聞かず、思い込みだけで作っちゃいました。」という雰囲気がありありと出ている。せめて子供向けの絵本でもなんでも1分でも1秒でもいいから目を通せばいいのに、と思うのだが、こういう人に何を言っても無駄なのだろう。

だが、あまりにも強烈な個性ゆえに、本尊である鍬五郎の閻魔大王を完全に喰ってしまっている。

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これが本尊の鍬五郎の閻魔大王。丈六に近い大きな像で、薄暗い洞内にホコリをかぶっている姿は鬼気迫るものがある。全国的に見ても屈指の閻魔大王と言っていいのではないか。

おそらく漆喰造りで、服のしわの表現などに常福寺大仏と共通点が見られる。

(2001年11月24日訪問)