本日の最終目的地、聚楽園大仏。
名鉄常滑線の聚楽園駅からみると、段丘の上に銅色に輝く露座の大仏が見える。
なんだか現実離れした風景だ。
参道を上がっていくと、大仏の顔がこちらを見ているようなアングルで迫ってくる。
東大寺のような大仏殿系の大仏では、高窓からの顔出しという参拝方法がある。大仏はその巨大さゆえに、前に立つと大きさばかりに目が行ってしまうが、顔出しは巨大な構図の一部を切り取ることで、仏と参詣者の対話が可能になるというシステムだと思う。
この大仏では、石段の上に載った大仏の顔という構図で、やはり顔だけの参詣が可能になっているのである。
大仏の前の踊り場には、コンクリ造の仁王像がある。
この仁王像の写真を整理しているとき、直感的にある別の仁王像のことが頭に浮かんだ。それは神奈川県の江ノ島にある最福寺別院という寺で見た仁王像である。実際に写真を取り出して比較してみると、筋肉の造形や天衣の形状などがこの像と酷似していることがわかった。江ノ島の像はこの像を参考にしたのか、それとも、この像にも有名なオリジナルがあるのだろうか。
ちなみに江ノ島の最福寺の本院は鹿児島にあり、大仏のある寺である。
しかし、自分で言うのもなんだが、人間の潜在的な情報処理能力はすごいものだと思う。似た仏像を検索しようと思っていたわけではないのに、無意識に確認すべき仏像が思い浮かぶというのは、いったいどういう仕組みなのだろうか‥‥。
大仏は近くで見ると、想像以上に大きい。高さは18.8メートルで東大寺の大仏より微妙に大きいサイズだ。
銅色に塗られているのは、前回の旅で見た常福寺大仏と同じである。
ちなみに大仏の製作者も常福寺大仏と同じ、後藤鍬五郎と言われている。
大仏の周囲は公園になっているが、周りにはほとんど人がいなかった。けだし大仏とはそういうものである。
基壇の背後には内部への入口があるが、残念ながらふさがれている。
入口が後方であり、香狭間のような意匠になっている点が常福寺大仏と似ている。
30年くらい前までは入ることができ、中には螺旋階段があって大仏の胎内に入ることができたという。
大仏の眼前に広がる風景。
製鉄所がどこまでも続いている。実に仏の世界を想像しにくいロケーションなのである。
(2002年02月10日訪問)