碧南市の商業の中心地、棚尾地区。左上の地図をクリックすると、町が丸く形作られているのが見て取れる。市の中心部が丸い台地になっていて、その形のまま町並みが作られたためだ。
地図では碧南駅で終点になっている名鉄三河線は、訪問時にはまだ終点ではなく、丸い町並みの輪郭にそってぐるりと廻って吉良町まで伸びていた。その輪郭はまるで口を上にしたキンチャクのようで、どうしてこんな円を描くように鉄道が敷かれたのか不思議な路線だった。
棚尾地区の中心には毘沙門天妙福寺という寺があるのだが、その寺の前に高い火の見櫓が立っていた。
寺の常夜灯と火の見櫓が対照的な光景を作っている。
高さは20mくらいはあろうか。望楼部分は普通の建物なら4階以上の高さがある。棚尾地区自体が少し高台なので、ここに登ったらずいぶん見晴らしがよいのではないだろうか。
部材はすべて直線的で、意匠が凝っているとは言い難い。しかし、古ぼけた商店街の街路灯や電柱の茂みの中から、独りスッと天を衝く孤高な姿が印象に強くのこった。(左上段写真)
棚尾地区で見かけたしもた屋。かつては料理屋か旅館であったろうか。
角地にあって店の角が45度に裁ち落としてある建物なのだが、屋根の下り棟のところに入母屋のような妻が作ってある。通常、妻は大棟(水平な棟)の端に作るものであって、下り棟に妻をつくるという収め方は珍しい方法だが、無理なくしっかり収まっている。料亭や茶室など数寄な建物を造りこなした腕の立つ大工の仕事なのだろう。西尾市内でも同じような収め方の屋根を見かけた。
(2001年11月24日訪問)