北室院

大井の五ヶ寺。十王堂の業の秤は駿河問いという縛り方。

(愛知県南知多町大井真向)

旅の2日目。高速道路を使って知多半島の南端の南知多町をめざす。知多半島の南は前回の旅でも一度訪れているので途中の道程ははしょることにした。目的地はタヌキの寺・中之院の再訪なのだが、ここまで来て1ヶ寺だけ見て帰るのもなんなので、他の寺にも少しだけ立ち寄ることにした。

実は前回の旅では少し時間が押していて、気になったものの素通りした場所があった。それが南知多町の「大井の五ヶ寺」と呼ばれる寺だ。知多半島の南端に近い小さな入り江の漁港、大井にある寺町である。

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最初の寺は、北室院。

山門は切妻造の八脚門の仁王門。

仁王の部分にはアクリルのパネルがはめてあって、きれいな写真が撮れなかったのだが、八頭身で北斗の拳みたいなノリのなかなか男前な仁王である。仁王の風化を防ぐためとは思うが、アクリルパネルは無粋ではないか。

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山門をくぐって境内に入ると、すぐ左側に水盤舎がある。写真に見えるのは、左側から明星井、仏手石堂、宝形造の三十三観音堂、本堂。三十三観音堂と本堂のあいだにわずかに見えている玄関のような部分は十王堂である。

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仏手石堂。仏手石と誕生仏が安置されている。仏手石はかなり珍しいものだと思う。ネパール伝来のものなのだそうだ。

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北室院は知多八十八か所霊場の札所である。境内には、他の札所でもよく見かけたノボリが立ち並んでいる。

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三十三観音堂の内部。

本尊から言えば大師堂、機能から言えば護摩堂かも知れない。いちおう三十三観音堂ということにしておく。

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三十三観音堂と本堂の間にある十王堂の内部。

中央には本地仏の地蔵菩薩がいて、閻魔大王は脇に寄せられているため、ぱっと見には乱雑な感じに見えるが、よく見るとかなりきちんとした十王堂である。

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十王だけでなく、司命、司録といった書記官や、奪衣婆、人頭杖、業の秤、浄玻璃の鏡などの装置もそろったほぼフルセットの十王堂である。足らないとすれば、執行人の鬼卒がいないところだけだろうか。

あと、よく見ると閻魔王が2体あり、全部で11体あるように見える。

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人頭杖とは小さな首が棒の先についたもので、この頭が生前の善行と悪業を知らせるというセンサーだ。

業の秤はその人の罪の重さを量るハカリである。私は子供のころ、これは罪人をシバいているところの模型かと思っていた。この業の秤もどう見ても責めという感じだ。なにしろ縛り方がいわゆる「駿河問い」というサディスティックな縛りで、とても普通に計量されているようには見えない…。

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本堂の右側には玄関、庫裏。庫裏の前には調理場のような謎の建物があった。

(2002年02月10日訪問)

福岡県の神社 (アクロス福岡文化誌 6)

単行本 – 2012/5/1
アクロス福岡文化誌編纂委員会 (編集)

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