引田稚蚕共同飼育所

L字間取り。大部屋タイプか。現在は製材所倉庫。

(群馬県前橋市富士見町引田)

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深山から農免道路を通って、前橋・富士見村方面へと戻ってきた。

前橋方向から富士見村にくると、十二山という小山が目立つ。火山山麓にできる地形「流れ山」である。引田の稚蚕共同飼育所は、十二山のすぐ北側の県道渋川大胡線に面して建っている。

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この飼育所の特徴は、
・側面に採光/通気のための高窓がない。
・側面の上部と下部に換気扇がある。
・屋根に換気塔がない。
・建物がL字型になっている。
という点だ。特に、側壁の下部に換気扇があるのは注目点であろう(左上写真)。小部屋型の蚕室の場合、ムロの上にしか窓は付けられない。外壁の下部に換気扇があるということは、もしかするとこの飼育所は大部屋タイプなのかもしれない。

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屋根に換気塔がないのは、屋根が改装されたのではなく、もともとなかったのではないかと思う。

というのも、この建物とほぼ同形式の飼育所が小坂子一区にあり、そこにも換気塔が見られないからだ。

道路に面した棟が飼育室、奥の折れ曲がった建物が貯桑場(ちょそうば)挫桑場(ざそうば)と宿直室になっていたのではないかと思われる。

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いまで見た直線型の間取りの飼育所とはあきらかに違うタイプであり、いずれはこのタイプの建物の中を見てみたいものだ。

現在は製材所の倉庫(?)として使われているようだった。道路沿いに「ケンタマキさしあげます。無料。工場渡し」と書かれている。「ケンタマキ」とは間伐材の薪らしい

(2007年01月14日訪問)