日之出稚蚕共同飼育所は、石井三区稚蚕共同飼育所の近くにあり、地域的にも同じ石井三区になる。いずれも中規模の飼育所で、これほどの距離に2箇所も飼育所があるのは不思議だ。
年式もそれほど隔たってはいないので、年代が違うというわけではなさそうだ。地域内で何らかの理由で不仲なグループができてしまったのか、あるいは、地域外へ稚蚕を販売する商売をやっていたのかもしれない。
この飼育所は周囲に遮蔽する薮や隣家がなく、全周からくまなく建物を観察することができる。外観にもほとんど手が加わっていないので、赤城南面地方の典型的な飼育所の外観のリファレンスモデルとして最適と言えるだろう。
宿直室、貯桑場は南側。宿直室の横に出入口があり、ここから桑を搬入したのではないかと思われる。
道路側にはひさしが付いているが、このような庇が当初からあったかどうかははっきりしない。
このひさし部分を壁で囲って、更衣室に改造してある飼育所があるので、おそらく当初からこのひさし部分はあったのではないだろうか。
配蚕口は北側。
現在はスチールのシャッターが取り付けられているところを見ると、内部は倉庫になっている可能性が高い。
だが、ここ以外に新たな出入口が増設されている様子はない。
反対側から見たところ。
直線型、小部屋電床育、桑搬入口(?)付きの典型的な飼育所の外観がとてもわかりやすく確認できる。
高窓は5つあることから、飼育室(ムロ)は左右5個づつだったのだろう。
排気塔は現在は2つだが、棟の右側に補修の跡があるので、元は3つだったと思われる。
桑搬入口と思われる戸はガラスになっていたので、中をうかがうことができた。と、言っても肉眼ではほとんど何も見えず、デジカメの画像を増感して、やっと中がわかったのではあるが・・・。内部は倉庫になっているとはいえ、飼育所独特の構造はだいたい残っているようだ。
右側の床がある部屋は宿直室であろう。この部屋の真下は、地下室で貯桑場となっているはずだ。
はっきりとは確認できないが、地下室への階段は写真奥の右側にあるのではないかと思う。
上の写真の左上部分を拡大すると、電球が並んでいる。
これは飼育室の温度をモニタ装置ではないだろうか。
(2007年02月11日訪問)