東大室稚蚕共同飼育所。国道50号線から少し入ったとの川べりに建っていた。
よく見ると、新旧2種類の様式の建築が並列して建っている。
新しい方の建物は、ブロック電床育方式のおなじみの建物で、現在は倉庫として利用されている。
手前、東側が配蚕口、西側が貯桑場になっているようだ。
古い方の建物は、上細井稚蚕共同飼育所でも紹介した土室育方式の建築だ。しかもその外観は、よく郷土史関連の写真などで「稚蚕の土室育」として紹介される建築の典型的なものであり、ほとんど手が加えられていない。
手前、東側が配蚕口になっている。窓ガラスが割れているので中を覗くことができた。
驚くべきことに、内部は倉庫などに転用されておらず、飼育所として使用されていたときの状態のまま残っている。
手前左側が土室育のムロ。右側もかつてはムロだったと思われるが、南側の建物の増築にともない、作業者の更衣室に改装されていた。
奥の半分は、土室育ではなく電床育の飼育室になっている。なぜ手前部分に土室育の飼育室が残ったのかは謎だ。
更衣室への入口。
もともとは飼育室だったところを改造したのであろう。アルミサッシュの取り付けかたがかなり強引な感じだ。
更衣室。
更衣室は2室あり、男女別になっている。
着替えが終わると、そのまま飼育室へ入れるようになっている。
建物のほぼ中央部。
中央部にはムロはなく、広い空間になっている。ここに宿直室と厨房がある。
建物の内部は土間になっているが、宿直室の部分だけは床があることがわかる。
手前の土間の空間は、挫桑場だったのだろう。養蚕の教科書では、挫桑場の面積は飼育室の1/4の面積が必要とされている。
宿直室の内部。
宿直や休憩に使われたのだと思われる。8畳の部屋だ。
飼育計画の作成事務なども行ったのかも知れない。
宿直室の横には炊事場があるが、この部分は当初からの設計ではないような印象がある。
現代の稚蚕共同飼育では、稚蚕はクリーンルームで飼育される。稚蚕飼育室と同じ部屋の中で煮炊きをしていたのはずいぶんおおらかな時代だったと言えるだろう。
宿直室の前の床には、板でふさがれた穴がある。
この穴の用途は、想像だが、地下の貯桑場へ桑を投げ落とした穴ではないだろうか。
地下室への階段は別にある。
やはり板でふさがれていた。
宿直室への出入口。
下にあるのは地下室の明かり取りの穴だろうか。
養蚕の教科書では、貯桑場の面積は飼育室の面積の1/2が必要とされている。
ひきつづき、飼育室について見てみる。
(2007年02月13日訪問)