「もう何があっても寺には寄らない。早く宿を探して寝たい。」
そう思って本立寺を後にして、ものの1分も経たないうちに勝運寺の伽藍が山腹に見えた。
「きょう見た中で、一番立派そうな禅寺だ。寄らねば…」と思ったところまでは覚えているのだが、その後の記憶はない。
よって、ボイスレコーダーの録音を頼りにこの文章を書いているが、ほとんどの写真が手ブレしていて、何枚かは流し撮りしたようになっていたことから、相当疲れていたのだということだけは間違いない。
総門は四脚門。
総門を入ると、無縁仏を経て、短い石段を登ると山門がある。
山門は薬医門で簡素な造りだ。
虹梁を貫に使っているのが珍しい。「虹貫」とでも言うのだろうか。
山門を入るとすぐ本堂。
本堂の右側は大きな玄関。その右は庫裏だが、庫裏は味気ない現代住宅だった。
本堂の左側には水子地蔵堂。
水子地蔵堂の奥には鎮守社らしきものが見えた。
境内にはほか鐘堂。
本堂の裏手には塔頭もあったようだ。
きょうの訪問地は、数の上から言えばあまり多くはなかったのだが、昨日の疲れが残っていたことと、山岳寺院を2ヶ所みたことで疲れは極限状態となった。最後の方で見た寺は、かなり特徴的な寺もあったのに記憶がはっきりしないのだ。
明日は竹原市を散策するつもりなので、とにかく竹原へと向かうことにした。
私は極端な疲労状態になると、時間がスローモーションの映画を見ているように遅く感じられることがある。忠海から竹原までの距離は、普通なら車ではすぐなのはずなのだが、疲労と眠気との戦いは恐ろしく長い時間に感じられた。もう一度この道を通ってみたら、風景がまるで違って見えてきっと滑稽だろうと思う。
竹原駅で旅館案内を探し、翌日の観光に都合がいいように、町並み保存地区へ歩いてゆける安宿を決めた。電話をしたときからあまりやる気の感じられない宿だったので、駅近くにあった健康ランドで体をほぐし、コンビニで夕飯を買ってから宿へ向かった。
部屋に案内されると、エアコンがなく蚊取り線香が置いてあった。網戸こそあったが、古い建物はどこからでも蚊が入ってくるようで何度も刺されてしまった。「蚊の宿」として記憶される残念な宿だった。
(2002年08月27日訪問)