東広島市から呉市まで1時間半の移動。時間は5時近くになっていた。今日の最終目的地へと向かう途中の狭い住宅街に萬年寺はあった。
この寺のことは事前に珍寺大道場の小嶋氏から聞いていたので、偶然発見するという楽しみはなかったのだが、この風景はどうだ。
目を奪う縦の構図。そして、空を覆うゴミゴミとした電線もいい感じだ。
坂の上から見ても絵になる。
寺のシンボルは朱塗りの楼門と多宝塔。どちらも新しい建物だが、意匠、バランスともに悪くない。
特に楼門の意匠が和様を基調としているのが特徴的だ。「和様」に対照をなす言葉として「唐様」があるが、その印象は必ずしも和様が日本的で唐様が中国的というわけではない。特に、このように朱塗りの柱に緑色の連子窓の生粋の和様建築は、非日常的であって異国情緒すら感じさせる。
楼門からは入ることはできず、少し上ったところにある薬医門から境内に入る。
境内を入るとすぐ右側に重層の堂。これは護摩堂であろうか。
左手に見える2階建ての粋な建物は書院(と思う)。
書院はまさに書院造りで、材木もよいものを使っていそう。
庫裏の左側は本堂。
屋根は本瓦葺き。ひとつ前の訪問地あたりで赤瓦ばかり見てきたが、ここではもう通常の瓦に戻ったようだ。
勾欄付きのぬれ縁を巡らしているが軒柱もない。
境内の端の一番眺めのよい場所に多宝塔が建っている。楼門は一部に唐様が入っているが、こちらは純然たる和様で、全体的な姿は鎌倉時代っぽい。
多宝塔の下部は建物で、納骨堂になっている。
左には鐘堂。唐様が中心だが、単層の鐘堂としてはかなり丁寧な作り込みだ。
楼門の横には稲荷社。
本堂の左には地蔵堂。
本堂の前には大師堂。
多宝塔のほうから境内を眺めたところ。この寺より上には幾らも住宅はなく、もう山が迫っている。
これから向かう寺はこの山の中にあるのだ。
多宝塔のところからは呉の町を一望できる。
今回は旅では呉の市街はまったく見なかったのだが、いつか呉市街を訪れたいものだ。
(2002年08月28日訪問)