黒岩風穴は、榛名山の中腹の「黒岩」という岩体のふもとにある風穴だ。2007年に稚蚕飼育所巡りを始めた初期のころに一度入口まで来ていながら撤退した苦い思い出のあるスポットでもある。今回はここがメインの目的地だったので、時間も身支度も準備万端でリベンジとなった。
箕郷町から榛名湖畔へ登る県道28号線を進むと、途中右手に垂直の岩壁が見える。それが黒岩だ。その場所が林道の入口なのだが、この林道は先のほうが土砂崩れで通行できないため、県道の部分に車止めがあって車で入ることができない。そのことは2007年のときにわかっていたので、車止めの手前で駐車して歩く計画である。
林道を20分ほど歩いたが、風穴らしきものは見当たらない。運よく山仕事の人がいてだいたいの場所を教えてもらえたが、かなりわかりにくい場所なので、私もその人に教えてもらわなかったら見つけられなかったと思う。ポイントは、県道から林道に入って400mほど進んだところの最初のY字の分岐を左に入って、さらに300mほど歩いたら、左手の若い植林地に踏み入る。踏み入る位置にはこれといった目印はなく、そこからは軽い薮漕ぎのような状態になる。風穴がビジュアル的にどのようなものかわかっていないと、発見するのはむずかしいと思う。
これがその風穴だ。地下から吹き出す冷気によって、カイコの卵が孵化する時期をコントロールするために使われた施設である。
明治以前にはカイコは1年に1回しか生産できなかったのが、風穴の利用によって1年に何度も生産できるようになった。この風穴は、榛名風穴合資会社が明治38年に開設して、大正9年ごろまで使われていたという。
石垣のように見えるのは建物の外壁に相当する部分で、この壁の裏側が建物の室内であり、冷蔵室だった。
壁に登って、冷蔵室部分を見おろしてみる。
ここには以前は木造の屋根が載っていたのが、崩れて残骸がころがっていた。
写真中央の石垣のすきまから冷風が吹き出ているのだろう。危なそうなので、降りるのはやめておいた。
石垣を構成する石は変成岩のようだ。榛名山は活火山なので、変成岩はないないはず。おそらく他の地域(県南)などから運んできたものではないかと思う。
高崎市在住のT氏によれば、これは板状安山岩で、この付近で産出する石とのこと。
近くには平らになった場所があり、木材などが散乱していたので、ここには事務所か宿舎があったのだろう。
(2011年05月05日訪問)