雲門寺の自動車用の参道の両側は桑畑になっている。
かつて“桑の海"と称された群馬県も、いまでは桑畑は珍しくなっている。雲門寺のある安中市には、まだ30戸強の養蚕農家が残っており、県内では前橋市に次いで多くの養蚕農家が残る地域である。
雲門寺の石門の近辺の畑をみてみよう。
この畑全体は、株の高さは「
剪定の仕方をみると、枝がすべて切り落とされて丸坊主になっている。4月に丸坊主になっている桑は、5月中旬に配蚕される「
3月下旬ごろ、枝を剪定してこのような姿に整えることから、この仕立てを「
彼岸切りの桑園があれば、夏蚕を育てている農家が近くにあることがわかる。
かつて、カイコは年間5回、6回と飼育された時代もあったが、現在、群馬県のJAから配蚕されるカイコは、春蚕、夏蚕、晩秋蚕の年3回である。このうち、夏蚕を生産する農家は減ってきている。年3回飼育する農家は、養蚕を経営の中心とした昔ながらの専業農家の可能性が高い。
寺の本堂付近の桑園。
こちらは、株の上に1mくらいの枝を残して刈られている。これは、春蚕に使うための仕立て。この枝に葉とわき芽が伸びて、5月下旬には食べ盛りのカイコに充分な量の葉がつく。
春蚕ではこの枝を付け根から切ってカイコに与えるので、春蚕が終わると、この畑は丸坊主になる。
枝の先端を見ると、斜めに切れている。
これは「
桑切り鎌は、剪定ばさみに比べて使うのにコツがいるが、1所作で切れるため、収穫スピードは速いという。
桑の畝間には雑草除けに藁が敷いてあった。
丁寧な仕事がしてある。勤勉な農家なのであろう。
群馬県では毎年、養蚕農家の20%が廃業している。
養蚕には国や自治体などが補助金を出してはいるが、それでも現在の繭価格は養蚕の収支が黒字になるにはほど遠い金額である。つまり、現時点で残っている養蚕農家のほぼ100%が、他の作物の売上や年金をつぎ込んで赤字の養蚕を続けているはずだ。しかしそうした高齢者が引退すれば、あとを継ぐ人はいないだろう。
おそらくこうした風景が見られるのも、あと10年といったところだろうと思う。
(2013年04月08日訪問)