碓氷川の北岸を東西に走る中山道(国道18号線)の安中市付近は信号も多く、2車線箇所で右折して店舗に入る車のために流れが特に悪い区間だ。そのため高崎方向から松井田ICにアクセスするときは、安中駅前から碓氷川南岸の磯部停車場線を走ったほうが気持ちよく走れる。
この磯部停車場線は中山道の裏街道という感じではなく、あまりぱっとしない田舎道である。かつては畑のあいだをうねうねと曲がりながら続いていた道だったのだろう。その後、交通の発達で道が直線に付け替えられたとき、ところどころに旧道の痕跡が残った。
これから紹介する辻堂は、そんな取り残された旧道にあり、周辺の区画整理とともに遠からず消滅しそうな物件である。
この旧道はすでに区画整理で袋小路みたいになりつつあるため、磯部停車場線を走ったことがある人でも、まずこの堂に気付くことはないだろう。
この堂は一間社流造。神社の末社などにありがちな規模と構造だ。
水盤舎もある。
同じ地域の黄金久保の不動堂で見た水盤舎とも似ているように思う。
祀られているのは天神様。
社殿の前には、小石が供えられている。このいわれについてはわからない。
神像は彩色されている。
「辻堂」とは、(お寺や神社の境内ではなく)道ばたにある堂のことなので、これはまさに辻堂としか言えないのだが、何か変だ。それは辻堂のイメージが常に集落の中にある堂であって、野にあるもののイメージではないからである。
ここはかつて家並があった場所なのだろうか。
いまは堂の廻りも荒れていて草が生え放題。隣の家が堂を迷惑に感じているのか、そこだけ塀を立てて目隠しにしているのも、打ち捨てられた感じを強くしている。
堂の造りは結構ちゃんとしている。
向拝柱の上にある木鼻は、左右で違う意匠のものが取り付けられている。
向かって右側の木鼻のほうが古そうだ。
長年補修されて来たのだろう。年代はたぶん江戸時代の前半くらいではなかろうか。
(2013年07月21日訪問)