この日、最後にするつもりで訪れた飼育所。集落の奥まったわかりにくい場所にあるため、普通に道を通っていただけでは見つけられないだろう。
貯桑室へは道から直接搬入でき、しかも車寄せのような屋根があるので、急な雨や、日射の強いときにも作業しやすかったのではないか。
「丹生共進稚蚕共同飼育所」という額が掲げられている。昭和41年と書かれている。
昭和41年といえば、比較的大型で軽量鉄骨造の飼育所が作られた時期だが、ここは木造トラスの小屋組みで、全体的に古い印象の建物になっている。
道路に面した側に宿直室があるようだ。
敷地が細長く、矩形の短い辺しか道路に面していないのでこうせざるをえないのだろう。
稚蚕飼育所の基本設計として、蚕を運び出す配蚕口と、貯桑場は建物の反対に設置されるので、敷地が奥に長い場合悩ましい問題になる。
中を覗いてみると、宿直室と挫桑室のあいだに細い通り土間があって、通り抜けられるようになっていた。初めて見た造りかもしれない。
奥の突き当たりにも配蚕口状の戸があるが、奥の戸は蚕糞などを処理するときに使うくらいだったのではないかと思う。
室はブロック電床育のようだった。
(2008年06月28日訪問)
日本のお寺・神社 絶壁建築めぐり
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飯沼義弥 (著), 渋谷申博 (監修)
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