宇芸神社の入口にあった稚蚕飼育所。
木造の稚蚕飼育所の建物は、通気のために屋根に越屋根を載せて天窓を付ける場合が多いが、この建物にはそうした特徴が見られない。
高窓も小さいので内部は暗かったのではないかと思う。
全体的に小さな建物で、宿泊室側は屋根に段差があって低くなっている。これまでに見たことがないタイプだ。
入口には「神成共同稚蚕飼育所兼公会堂」の扁額が残っていた。本サイトで紹介している稚蚕飼育所は、ほとんどの場合「稚蚕共同飼育所」と表記している。なぜなら、この複合語は「稚蚕」+「を」+「共同飼育」+「する」+「所」という構成だからである。
「共同飼育」とは「科学的な管理方法による稚蚕飼育」を意味し、それ以前の経験的な稚蚕飼育手法を「持ち寄り飼育」と呼んで区別している。
入口の横には更衣室と思われる半間ほどの広さの部屋がある。
右側のフックに白衣をかけておいたのだろう。防疫面ではあまりよい造りとは思えない。
窓から内部を覗いてみると、宿直室と挫桑室は一間に繋がっていて、畳敷きになっていた。
小坂子十二稚蚕共同飼育所では、挫桑室を改装して畳敷きにしてあったが、ここもそうなのであろうか。
宿直室が手前で、奥が挫桑室だったのだろう。
表彰状がたくさん掲げられているが、字は読めない。もしかすると、繭の出来を製糸会社から表彰されたものかもしれない。
飼育所の前には消毒槽の跡と思われる花壇があった。
(2008年07月12日訪問)