あるとき、熊谷市にある片倉シルク記念館という博物館(とても資料が充実しているのに、写真撮影禁止なのでソーシャルメディアなどで共有されず、知名度が低いのが残念)を見に行った。
その途中でなぜか立寄ったのがここ、旧多野会館。
当日はとなりにある幼稚園の行事があったため、敷地が保護者の駐車場となっており、やや写真が撮りにくい状態。
門柱にも、旧帝国ホテルを思わせるステキな意匠があるが、幼稚園の看板で隠されてしまっていた。
建物の外観は、左右に千鳥破風を突出させた二階建ての帝冠様式。戦前の建物であることは一目瞭然である。
壁面はスクラッチタイルで修飾されている。これも帝国ホテルの影響。
帝冠様式とは、西洋建築の上に城や寺院のような屋根を載せた建築様式だ。一般には、戦前の国粋主義が急伸するなかでモダニズムに対抗して生まれたとされるが、この建物などはアメリカのモダニズム建築の巨匠、フランクロイドライトの影響が強いのが皮肉だ。
内部の様子。
現在はJAの事務所として使われている。
「多野会館」という名前からして、藤岡市の議場として使われていたのではないかという気がする。
両袖の部分が会議室だったのではないか。
この建物、スクラッチタイルが張られているのは表側だけ。
横からみると後ろ半分は白壁の土蔵造になっている。
裏側から見ると、まるで別の印象の建物になる。
旧多野会館の最大の見物はこの
東側のおそらく階段室と思われる場所の奥はトイレになっている。
階段室の奥がトイレっていうのも、「時代だなあ」と思ってしまう。
敷地にはほかに、昭和30年代を思わせる建物もあった。
(2010年10月24日訪問)