第三中学校の東側に「宮製糸所」という表札を掲げた家がある。かつて製糸工場を経営していたお宅だ。
前橋の小規模な製糸工場は「座繰繰糸」という繰糸機で生糸を作っていたところが多かった。座繰器と言っても手回し式で糸を横方向に引き出すタイプの機械ではなく、動力付きで糸を垂直方向に巻き上げるタイプのものである。厳密に言えば「諏訪式繰糸機」というタイプの製糸機械だ。
宮製糸所もはじめは座繰り繰糸から始まり、昭和40年ごろに自動繰糸機を導入したそうだ。
従業員は10名ほどで、最後のころは31デニールの太さのうらぎぬ用の糸を製造していたという。キモノの表地に使う反物に比べると、裏地はどちらかといえば安価な絹である。
工場の跡地は現在は駐車場になっている。
当時の設備などはもう残っていないそうだが、あみそ糸が残っているのを見せてくださった。
「あみそ」とは、生糸を
ピンク色のあみそ糸は、31デニールを表す色だ。
庭にはカイコの供養碑があった。碑文は「蚕霊尊 前群馬県知事神田坤六書」とある。
元工場の敷地の一角に桑の木が生えていた。
鳥が種を運んできたのか、勝手に生えた樹だが、かつて蚕糸にかかわっていた縁を感じて、切らずに育てているという。
宮製糸の周辺には、他にも工場っぽい建物がいくつか目に付く。
製糸に関連したものとは限らないのだが、念のため紹介しておこうと思う。
(2014年05月18日訪問)