私が滞在しているカレン州の職場の主だったスタッフや、カレン州で雇っている通訳さんはキリスト教徒だ。カレン州は早くから宣教師が活躍した場所で、キリスト教徒が多い地域なのだ。そのため、カレン州で彼らにお寺のことを訊ねてもわからないことばかりである。
だがマンダレー出張で雇った通訳さんは仏教徒なのであった。しかもミャンマーの仏教の概念を日本語の適切な仏教用語を使って通訳できるという非常にレベルが高い通訳さんなのだ。ツアーコンダクターも兼ねており料金も高いので長期で雇うのはむずかしいが、彼女から得られる旅先での効率と安心感、知識の質と量を考えると、そこはお金を惜しむところではないなと感じる。
その彼女にはこれまでもスポット的に通訳をしてもらったことがあり、私が異常に寺好きだということをよく理解してくれている。普通の観光ガイドが素通りするような寺でも、「ここ入る?」と気を使ってくれるので、寺参りが捗るのだ。
この日もちょっとした空き時間に近くのお寺に連れていってくれるのだった。
場所はピンウールィンの中心街にある寺町のようなところ。
タクシーの運ちゃんが素通りしようとする大味な感じのお寺に入ることになった。名前はGoogleMapsによれば「ウーチャンティ寺院」だが、現地で訊いた記憶では「マハミャムニ寺院」なので、記憶のほうを優先することにする。
本堂は平面が正方形、RC造の地味な建築だ。
中に入ってみると、人っ子ひとりいない。
中央に黄金の仏像があった。
マンダレーのマハムニ大仏タイプの仏像だった。
全身が金色だが、お顔だけが銀色に輝く。
本堂の右奥に手すりで囲まれたコーナーがあって、ザルが並んでいる。
ここは、仏像の顔を洗うための準備をする場所なのだという。月に4回、白檀とタナカを溶いた水で、仏像の顔を清めるのだそうだ。
この仏像の由来が書かれたポスターだったかな。
仏陀の両側に、日本でいう脇侍みたいなのがいる。
左側がミンタリプテラ、右側がシンマハマカラという神様だとか。
この本堂の小壁には、仏教説話画がずっと並んでいる。
下に見える緑色のプレートにはこの絵を寄進した人の名前が書かれているが、けっこう日本人がいるのにびっくり。
これは、チンチャーという遊女の話。
釈迦は祖国に祇園精舎という寺を得て、教団を拡大していた。それを妬んだ在来の宗教がチンチャーという遊女を雇った。彼女はまず夜な夜な寺に通う振りをした。あるとき釈迦が法話をしているとお腹に詰め物を入れて現れ、このお腹の子は釈迦の子だと詰め寄った。
だが天界の神がネズミに化けて忍び込み彼女のお腹のヒモを噛み切ったため、中身が転げ落ちたため彼女の悪巧みはすぐにばれてしまったという。
本堂の裏側の壁際には、リアルなお坊さんの像が並んでいた。
オレンジ色の袈裟を着たお坊さんもいる。タイのお坊さんの意味だと思う。
手前の焦げ茶色の袈裟はミャンマーのお坊さんである。
金色のシンティワリ。
日除けのウチワも金色で、顔が写り込んでいる。
ピンクの袈裟を着ているのは尼僧。
尼僧の仏像というのも初めて見た。
この寺はいまのところ、主だった堂宇は本堂だけである。
鐘つき柱も建物の中にあった。
(2015年05月05日訪問)