パアン市、カンナー通りの北のはずれに、殉職者公園という広場がある。ビルマ建国の父といわれる、アウンサン将軍の碑があるという。あまり用事のある地域ではないので、公園をちゃんと訪れたことはないが、その横は何度か通っている。
ある夕刻、その道を通ったとき、怪しげなネオンライトが輝く家があることに気付いた。
ん? これはもしかして、映画館!?
以前、職場の同僚の日本人がミャンマーの若い子と遊びに行ったら、映画館のような場所に連れて行かれたという話を聞いたのだが、その場所はよくわからないままだった。
本当にあったんだ、映画館。明るい時間に通ったのでは気付かないような店構えだ。
同僚の話では階段を降りたところにあったというから間違いない。
ビデオプロジェクター方式の映画館で、観客のリクエストで上映作品が変わることがあるらしい。しかも、一つの映画が終わらないうちに他の作品に切り替わるというよくわからないシステムらしい。
これが今の上映作品か。
『スパイダーマン』の3D版。
かなりの大作映画ということになるが、ちゃんと配給会社に許可を取って営業してるとは思えない。
大作映画のポスターが所狭しと貼られている。
緑色のネオンがそれにいかがわしい雰囲気を添えている。オーナーのおじさんがいたので、許可を得て写真を撮らせてもらった。
上映室は家の地下室のようなところにあるようで、階段を降りていく。
これがまた、なんとも怪しい感じ。
この扉の中が上映室になっている。
中も見せてもらった。
見えるところには観客はひとりだけ。メガネをかけているので、3D作品を上映中っぽい。
話を聞いて想像していたイメージよりはちょっとマシだ。
パアン市には学園通りにかなりちゃんとした映画館があり、すでに紹介している。そのとき現地の人に他に映画館はないのか訊ねたのだが、「むかしはもう1館あったがいまはない」と言われた。
そのもう1館がこの小屋なのか、それともこれは新たにできた小屋なのか。
昭和の中ごろ、まだテレビが普及するまえの日本には、街道筋の小さな商店街や農村にも映画館があった。話によればその中には、ずいぶんと小さな小屋もあったようで、それはちょうどこの劇場のようなものだったのかも知れない。
初めて来た場所だが、どこか懐かしい感じがする劇場だ。
(2015年11月30日訪問)