しばらく走った塩木という集落にベーハ小屋が密集していたので立ち寄ってみた。なんとこの小字だけで3軒のベーハ小屋があるのだ。
この集落の小屋を例にベーハ小屋の観察ポイントを詳細に見ていこう。おそらく先ほど車窓から見た仁堀中のベーハ小屋も同類であろうと思われる。
これはその最初の小屋。道路に妻を向けて建っている。
土蔵造で二階屋の屋根高だが、内部は吹き抜けの一室になっている。この中にタバコの葉を吊って五昼夜かけて乾燥、発酵を行うのである。
もちろん内部はオーナーにお願いして見せてもらうでもしなければわからないので、ここでは外から見て判断できるポイントについて説明しよう。
- 越屋根の妻側には突上げ戸がある。
- 母屋の切妻屋根の
破風 が切れてハの字になっている。 - 越屋根の平側は上半分がガラリ板、下半分がはめ殺しの板壁。
- 突上げ戸の開閉は壁面のハシゴで行う。
ベーハ小屋には、広島式、大阪式、折衷式という分類があるとされる。このうち広島式には越屋根はないので、この小屋は遠目にも大阪式か折衷式のいずれかと判断できる。
大阪式とは室温の管理のためにもっぱら越屋根部分の可動部を開閉することで換気をするタイプである。折衷式は室内の天井にある天窓の開閉によって行うタイプだ。
この小屋は越屋根にガラリ板がある。ガラリ板は開閉ができない開口だから、この小屋は折衷式であろうと推測できる。
また「越屋根の妻に突上げ戸があるのは折衷式の特徴」という証言もあるので、ますます折衷式の可能性が高まる。
もっとも、本当にそうなのかは中を見せてもらえば明白なのだが。
次に小屋の下部にあるスカートのような屋根である
道から見て裏側の妻には突上げ戸がない。
これは突上げ戸の開閉がハシゴ式のため、下屋のある側にはハシゴをかけられないからである。
それでも破風はつながっておらずハの字になっている。このような屋根を破風切れ型と呼ぶ。この小屋では両側が切れているので、両破風切れ型と言ってもいいかもしれない。
(2011年02月26日訪問)