昨日から探していた上横野の製紙水車は、実は県道に面して建っていたのだ。外見がそれらしくないのに加え、水輪が建物の裏側にあったので、来るときには気付かずに通り過ぎてしまっていた。
これが往路から見た水車小屋である。これはさすがにすぐに水車小屋だとは気付かない。
反対側から見ると建物の裏側に水輪が見えるので、復路で見落とすことはないだろう。
それにしても、昨日町内で訊いた人は全員知らないと言っていたが、これはいくらなんでも同じ町内なら気付きそうなものだと思うが。
建物自体は大きく、水車小屋というよりも、工場に水輪が付いていると表現するほうが適切かもしれない。
取水は50mほど上流の堰。
川の水量の1/3くらいが水車の水路に引き込まれている。
ここから先、水路は河床からの高度を上げていく。
水路は水車小屋のあたりでは、道路よりも高くなっている。
水の掛け方は胸掛け。つまり水輪の下部で水を受ける方式。
回転させないときでも水路に水は来ていて、水輪の手前でせき板のところで排水している。
排水された水は水車小屋の横で川に流れ込んでいた。
水路に分水された水量が多いことがわかる。
非常に大きな水輪だ。直径は5mくらいはあるだろう。もちろん水輪の材質は鉄。産業用の水車らしいすばらしい風格。
中を見せてもらった。
水輪から得られた動力は、歯車で回転数を上げてプーリーへと導かれる。
動力は天井のシャフトに上げられ、装置へ伝達される。
手前に見える、オレンジ色のベルトがかかった赤い箱状のものは、おそらくディーゼル発動機。何らかの理由で、水車が使えないときのバックアップ動力か。
奥に見える浴槽のようなものが、製紙のために繊維を細かくほぐす装置で「ビーター」と呼ばれるもの。その工程を
ビーターの内部。
この流れるプールというか、卓上流しそうめん機のようなところに水と原料を入れ、循環しながら繊維が細かくなってゆく。
半円形のカバーの内側で刃が回転する。
でき上がった原料はこの箱で水切りされ、工場へと運ばれるのではないかと思う。
建物の中は木を茹でるようなよい匂いに満ちている。
運搬用のコンテナがたくさん置かれていた。
現役で使われている産業水車がいつまでも残ることを祈りたい。
(2003年04月30日訪問)